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日々を新たにし、己の至善に止まれ

目次

■引用原文(書き下し文付き)

原文:
康誥曰、克明徳。大甲曰、顧諟天之明命。帝典曰、克明峻徳、皆自明也。
湯之盤銘曰、苟日新、日日新、又日新。康誥曰、作新民。詩曰、周雖旧邦、其命維新。是故君子無所不用其極。
詩云、邦畿千里、維民所止。詩云、緡蛮黄鳥、止于丘隅。子曰、於止知其所止、可以人而不如鳥乎。
詩云、穆穆文王、於緝熙敬止。為人君止於仁、為人臣止於敬、為人子止於孝、為人父止於慈、与国人交止於信。

書き下し文:
康誥に曰わく、「克く徳を明らかにす」。大甲に曰わく、「天の明命を顧い諟す」。帝典に曰わく、「克く峻徳を明らかにす」。皆自ら明らかにするなり。
湯の盤の銘に曰わく、「苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなれ」。康誥に曰わく、「新たなる民を作せ」。詩に曰わく、「周は旧邦なりと雖も、その命は維れ新たなり」。是の故に君子はその極を用いざる所なし。
詩に云う、「邦畿千里、維れ民の止まる所」。詩に云う、「緡蛮たる黄鳥は丘隅に止まる」。子曰わく、「於止知其所止、可以人而不如鳥乎」。
詩に云う、「穆穆たる文王は、於、緝熙に止まるところを敬しむ」。為人君止於仁、為人臣止於敬、為人子止於孝、為人父止於慈、国人と交わりては信に止まる。

(『礼記』大学 第二章 第三節)

■逐語訳(一文ずつ)

  1. 『康誥』には、「徳を明らかにせよ」とある。
  2. 『大甲』には、「天の命令を正しく顧みよ」とある。
  3. 『帝典』には、「厳しくも偉大な徳を明らかにせよ」とある。
  4. いずれも、自己の内にある徳を自覚的に輝かせよという教えである。
  5. 『湯王の盤銘』には、「一日でも新たに、日々新たに、さらにまた新たにせよ」とある。
  6. 『康誥』には、「新しい民をつくれ」とある。
  7. 『詩経』には、「周は古き国なれど、その命は新し」とうたわれる。
  8. だから君子は、いかなる時も至善(最善の道)を極めようと努力する。
  9. 『詩経』には、「国は千里四方におよぶが、民がとどまる場こそが大切である」とある。
  10. 「黄鳥ですら、止まる所をわきまえる。人間が鳥に劣ってよいだろうか」と孔子は言った。
  11. 文王は、その徳を光らせ、常に「とどまるべき所」に慎重であった。
  12. 君主は仁に、臣は敬に、子は孝に、父は慈に、交際は信に「止まる」べきである。

■用語解説

  • 克明徳:自らの徳を努力によって明らかにすること。
  • 日新又日新:自己改革を日々繰り返し、常に進化し続ける態度。
  • 止於至善:あるべき姿(最高善)を明確にし、そこにとどまること。
  • 緝熙敬止:光り輝く善に対して慎みと敬いをもって向かう姿。
  • 仁・敬・孝・慈・信:それぞれの立場における「徳」の具体的な形。至善の標準。

■全体の現代語訳(まとめ)

古典の言葉は、すべて「自らの徳を磨き上げて明るみに出すこと」の重要性を教えている。これは、先天的に備わるものではなく、日々自覚的に磨き直していくものである。

また、道徳的に「とどまるべき徳」を知り、それを生き方の基準とすることが重要である。立場に応じた「仁・敬・孝・慈・信」のような徳目を、自己の中に定着させることが「誠意ある人」への道である。

■解釈と現代的意義

この節は、誠意を育むための「二つの柱」を提示しています。
一つは 「日々新たにする努力」、もう一つは 「自分の立場に応じて至善の徳を明確にし、それにとどまる」という指針です。

現代の変化の激しい社会では、「変わらぬ信念」と「日々の刷新」の両立が求められます。これは一見矛盾するようで、実は自己成長と信頼構築の両輪です。

■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
リーダーの自己革新「日新又日新」は、昨日のやり方に固執せず、常に問い直し、進化し続けることの象徴。
組織運営部門・役割ごとに「止まるべき徳(仁・敬・信など)」を明確化し、それを評価基準とすることで、文化の一貫性が保たれる。
人材育成日々の研修やフィードバックは、単なるスキルアップではなく「徳を磨く切磋琢磨」であるべき。
価値基準の明文化企業理念や行動規範を「至善」と定め、それをすべての意思決定・評価基準に反映することが、信頼される経営につながる。

■心得まとめ(ビジネス指針)

「変化に挑み、変わらぬ徳にとどまれ」

毎日新たな挑戦に向かいながらも、自らの立場にふさわしい徳を見失わない。これが真のリーダーであり、誠意を備えたビジネスパーソンの姿である。

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