目新しいものに飛びつき、珍しいものばかりを喜ぶ者は、
その先にある本質的で遠大な見識にたどり着くことはできない。
また、他人の意見や学びに耳を貸さず、ひたすら自分のやり方に固執する者は、
長く続けることができず、結局は本物の節操や成果に至らない。
本当の学びとは、他から学び、自ら考え、成長し続けること。
その積み重ねの先に、深くゆるがぬ見識が育つのである。
原文(ふりがな付き)
奇(き)に驚(おどろ)き異(い)を喜(よろこ)ぶ者(もの)は、遠大(えんだい)の識(しき)無(な)く、苦節(くせつ)独行(どっこう)の者は、恒久(こうきゅう)の操(みさお)に非(あら)ず。
注釈
- 奇に驚き異を喜ぶ者:珍しさ、新しさに惹かれてばかりいる人。『論語』の「異端を攻むるは、斯れ害あるのみ」(為政第二)に通じる姿勢の批判。
- 遠大の識:広く深い、本質を見極める見識。
- 苦節独行:苦しい中でも独自の道を貫こうとすること。ただし、他から学ばない独善に陥る危険も含意される。
- 恒久の操:一貫した節操。長く継続される真の志や理念。『論語』の「学びて思わざれば罔(くら)し。思いて学ばざれば殆(あや)うし」も参照。
パーマリンク(英語スラッグ)
seek-true-insight
(本物の見識を求めて)avoid-novelty-trap
(珍しさに溺れず)learn-broadly-grow-deeply
(広く学び、深く育てる)
この条文は、現代における情報過多・変化過多の時代においても大切な「軸の通し方」を示しています。
「面白い」「珍しい」という刺激に流されすぎず、また自己流だけに閉じこもらず、
学び合い、育ち合う姿勢が本質に近づく唯一の道であると教えてくれます。
1. 原文
驚奇喜異者、無大之識。
苦節獨行者、非恒久之操。
2. 書き下し文
奇に驚き、異を喜ぶ者は、大なる識(しき)無く、
苦節し独り行う者は、恒久の操(みさお)に非ず。
3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)
- 奇に驚き、異を喜ぶ者は、大なる識無く
→ 奇抜なものや珍しいことにばかり驚き、喜ぶような人は、遠くを見通すような大きな見識を持っていない。 - 苦節し独り行う者は、恒久の操に非ず
→ 一時的に苦しみに耐え孤高を保っているように見えても、それだけでは持続する真の節操とは言えない。
4. 用語解説
- 驚奇喜異(きょうききい):珍しいことや目新しいものに飛びつき、すぐに驚いたり喜んだりする心の動き。
- 大之識(だいのしき):大局的・深遠な見識。広い視野と本質を見抜く知恵。
- 苦節独行(くせつどっこう):苦しい状況にも関わらず孤独に節義を守って行動すること。
- 恒久之操(こうきゅうのみさお):永続的で一貫した節操や人格。ぶれない倫理観。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
珍しさや目新しさばかりに心を奪われる人には、大局的な見識はない。
また、苦しみに耐えて孤独に節義を守っているようでも、それが一時的なものであれば、本当の意味での一貫した人格とは言えない。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「一時の感情や姿勢に流されることの危うさ」**を戒めています。
- 一見すると斬新で魅力的なものに飛びつく態度は、一貫した判断力や大局観を欠く。
- 一方で、孤高やストイックさも、一時的・形式的なものであれば真の節操とは言えない。
つまり、「表面的な態度や一時の姿勢」ではなく、継続性と深い見識こそが本物であるという教えです。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
● 「奇抜さばかり追うと、判断を誤る」
流行りのトレンド、新技術、話題の手法──目新しいものに飛びつくだけでは、本質を見誤りやすくなる。
“今だけ”の魅力ではなく、“続く価値”を見る視点が重要。
● 「独善的なストイシズムは、組織を孤立させる」
孤高や苦節は尊いが、それが共感や協調を欠いたものであれば、ただの自己満足に終わる可能性がある。
継続的で柔軟な節操(持続可能な誠実さ)こそがリーダーの徳。
● 「真の判断力とは、“目先”より“遠き”を見る力」
新規性に驚かず、孤高を誇らず、淡々と価値の本質を見極めて継続する。
これが、信頼される意思決定者・持続的な組織文化の核になる。
8. ビジネス用の心得タイトル
「奇に驚かず、孤を誇らず──本質を見抜き、持続する者が“真の人物”」
この章句は、“真の見識と節操”は、一時の派手さや厳しさではなく、長い時間軸で判断すべきであることを教えています。
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