― 焦って仕事を求めず、学びを深める姿勢が人をつくる
孔子は、「まだ道半ばであっても、学びに徹する人物は希少である」と語った。
三年学んでも、なお「もっと学びたい」と願い、
収入や職を求めようとしない――
そんな人はなかなか得がたい存在であり、
まさに真に学ぶ者の姿勢を示している。
人はつい、結果を急ぎ、早く社会的な地位や報酬を得ようと焦りがちになる。
だが、孔子はそれよりも、自分を磨く時間と覚悟を尊んだ。
学びを惜しまず、時機が来るまで志を研ぎ続ける――
それが真に信頼される人間をつくる礎となる。
原文と読み下し
子(し)曰(のたま)わく、三年(さんねん)学(まな)びて、榖(こく)に至(いた)らざるは、得(え)がたきなり。
注釈
- 三年学ぶ:継続的に真剣に学問や修養に取り組むこと。ここでの「三年」は具体的期間というより、「相応の年月」の象徴。
- 榖(こく):俸禄、給与、職。つまり生活の糧となる仕事の意。
- 至らざる:求めない、手を出さない、という意味。
- 得易いからざるなり(えがたい):めったにいない、極めて稀であるという意。
原文:
子曰、三年學、不至於穀、不易得也。
書き下し文:
子(し)曰(いわ)く、三年(さんねん)学(まな)びて、穀(こく)に至(いた)らざるは、得(え)がたきなり。
現代語訳(逐語/一文ずつ訳):
- 「三年学びて」
→ 三年間学問に励んで、 - 「穀に至らざるは」
→ 言行が穀(礼儀正しく誠実な状態)に達しない者は、 - 「得易いからざるなり」
→ そういう人間はめったにいない(それほど稀なことだ)。
用語解説:
- 穀(こく):礼儀正しく、誠実で、品行方正であること。道徳的完成に近い人格的理想。
- 至らざる:到達しない、至らない。
- 得易いからざる(えがたき):容易に得られない。ここでは「めったにいない、珍しい」といった含意で使われる。
全体の現代語訳(まとめ):
孔子はこう言った:
「三年も学んで穀(誠実で礼儀正しい人)にならない者は、むしろ非常に珍しい。
つまり、誠実な人間になるのは、学び続ければ自然と身につくものだ。」
解釈と現代的意義:
この章句は、学びと人格形成の関係性を語ったものです。
孔子は「三年間まじめに学べば、人は必ず穀(誠実で礼にかなった人格)に至る」と考えていました。
そして、それにも関わらず変わらない者がいれば、「それは非常に稀な例だ(つまり、ほとんどの人は学べば正しくなる)」という意味です。
これは、教育と成長に対する孔子の深い信頼と希望を示しています。
ビジネスにおける解釈と適用:
1. 「学べば人は必ず変わる」──教育の力への信頼
- 教育・研修・継続的な学びは、人格を育てる。単なるスキルではなく、人間性も変えていける。
- 部下や後輩の「今」を見て見限るのではなく、「学び続ければ変わる」という視点を持つべき。
2. 「3年で“信頼される人”になれる」──育成期間の目安として
- 新人教育・OJT・ジョブローテーションのスパンとして「3年間」は意味がある。
- この期間を経て、誠実・礼節・職業倫理が身につく人材を育てることが目標。
3. 「変わらない人」への接し方にも示唆
- 逆説的に言えば、「3年学んでも変わらない人」がいれば、それは極めて稀であるべき。
- 人材教育の成果を評価する上で、「3年の学び=人格の礎」という基準を持つ。
ビジネス用心得タイトル:
「三年学べば、誠実は身につく──“人は学びで変わる”を信じよ」
この章句は、教育・育成・人材成長に携わる全てのリーダー・管理職に向けた大きな励ましと指針です。
「学びの力を信じる」「育成に希望を持つ」──その姿勢が組織を変えていきます。
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