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結びつきが、苦楽の種となる


■引用原文(日本語訳)

聖バガヴァットは告げた。
「というのは、プラクリティに宿るプルシャは、プラクリティから生ずる要素を享受するから。
彼が要素と結合することが、彼が善悪の胎から生まれる原因である。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第21節)


■逐語訳

プルシャ(個我/魂)はプラクリティ(自然)に宿っており、
プラクリティから生じた三つのグナ(性質・要素)――サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(暗質)――を「享受」する。
そして、この“要素(グナ)との結びつき(執着・同一化)”が、
魂が再び善や悪の結果としての「生」を受ける原因となる。


■用語解説

用語意味
プラクリティ宇宙の根本物質。万物を構成し、行為・感情・現象を生み出す。
プルシャ魂、真我、観照者としての意識存在。
グナ(要素)サットヴァ(清らかさ)、ラジャス(情動・活動)、タマス(無知・惰性)の三属性。プラクリティの本質。
享受(ボガ)経験し、味わうこと。苦楽に反応すること。
結合(サンガ)要素や性質と同一化し、「自分はそれである」と思い込むこと。
善悪の胎(スヴァグナ・ヨニ)自身の行為と傾向により生じる、再生・転生の結果。生まれ方・環境・苦楽の運命。

■全体の現代語訳(まとめ)

魂(プルシャ)は、本来は純粋な観照者である。
しかし、物質世界(プラクリティ)に宿ることで、
そこで起こる感情・思考・衝動(グナ)を“自分のもの”として味わい始める。
この「味わい=執着」が、行為の動機となり、善悪のカルマ(業)を生み、
それが次なる人生・運命(胎)を形づくる原因となる。


■解釈と現代的意義

この節は、「苦しみの原因は、体験そのものではなく、体験への同一化(結びつき)」にあると教えています。
私たちは状況や感情を“自分そのもの”と見なすことで、そこから離れられなくなり、苦しみを繰り返します。
逆に、それを“ただの現象”として見つめる視点があれば、苦楽に囚われない自由が生まれます。


■ビジネスにおける解釈と適用

視点解釈と応用例
客観性の獲得失敗・成功・評価と“自分”を結びつけ過ぎると、次の行動を縛ってしまう。感情を経験しつつも巻き込まれない態度が必要。
業績との距離感達成や未達を“自己価値”と結びつけないことで、健全な成長と持続的パフォーマンスが可能になる。
セルフマネジメント怒り・不安・興奮など、湧いてくる感情と「私自身」を切り離して観察する力が、冷静な対応力を育てる。
人材育成メンバーの“傾向(グナ)”を見極めつつ、それが本質ではないと理解することで、可能性を伸ばす支援ができる。

■心得まとめ

「執着が、再び私を苦楽の輪へと導く」

『バガヴァッド・ギーター』は、魂が苦しみや迷いを生む原因は、
世界を動かす“要素”と自分を結びつけ、「これが私だ」と信じてしまうことにあると説きます。
現代においても、成功や評価、感情や思考と自分を同一視することをやめ、
それらを“観る者”として距離を取ることが、真の自由・成熟・創造的な生き方への道を拓くのです。


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