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■引用原文(日本語訳)
「クリシュナに次のように告げた。
『両軍の間に私の戦車を止めてくれ。不滅の人よ。』」
―『バガヴァッド・ギーター』第1章 第21節
■逐語訳(一文ずつ)
- 「アルジュナはクリシュナに向かってこう言った。
- 『不滅の者よ(アチュートよ)、
- 両軍の間に、私の戦車を止めてください。』」
■用語解説
- クリシュナ:戦車の御者としてアルジュナを導く神。ヴィシュヌ神の化身であり、ギーターの語り手。
- 不滅の人(アチュート):クリシュナの別名。「揺らがぬ者」「堕ちぬ者」の意で、絶対的な存在、神性を表す。
- 両軍の間:戦いが始まる直前の最も緊張感ある位置。物理的距離だけでなく、精神的・道徳的選択の「狭間」を象徴。
- 戦車を止める:単なる停止ではなく、「立ち止まり、全体を見渡し、何が起きているかを理解しようとする態度」。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナは、御者であるクリシュナに向かって、「両軍の間に自分の戦車を止めてほしい」と頼む。その場面は、まさに戦いが始まる直前の緊張の一瞬であり、アルジュナがこれから自らの目で「誰と何のために戦うのか」を見極めようとしている姿を示している。これは、単なる戦略的判断ではなく、深い精神的問いの始まりでもある。
■解釈と現代的意義
この節は、アルジュナが「戦いに突入する前に立ち止まる」という選択をした重要な瞬間です。目的・相手・自分自身――すべてを一度冷静に見つめようとするその態度は、まさに「行動前の内省」を示しています。
現代においても、重大な決断や行動を起こす前には、すぐに突き進むのではなく「立ち止まり、全体を見ること」が不可欠です。感情や勢いに任せず、心の軸を見極める時間こそが、行動の質を決めるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
意思決定前の内省 | プロジェクト開始前に、自分やチームの動機・相手の立場・目的との整合性を再確認することが重要。 |
リーダーの冷静な視点 | 部下や周囲が熱くなっているときこそ、リーダーは一歩下がって「全体を見渡す」ことが求められる。 |
葛藤の前に立つ態度 | 難しい交渉や対立に入る前に、あえて立ち止まって相手を知ろうとする姿勢が、最善の判断を導く。 |
スピードより見極め | 速く動くことも大切だが、見極めがないままのスピードは、後で大きな損失を招くことがある。 |
■心得まとめ
「踏み出す前に、見るべきものを見極めよ」
勇気とは、すぐに行動することではなく、立ち止まって自分の心と現実を見つめる力でもある。アルジュナは戦場の只中で「見る」ことを選んだ。それは真の決断の始まりであり、すべての行動に先立つ「気づき」の瞬間なのだ。
この場面から、アルジュナは戦う相手の顔を見て心を揺らがせ、次第に大きな精神的葛藤へと入っていきます。次
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