晴れた空に明るい月が出ている。
どこまでも飛んで行ける広い世界が広がっているのに、
蛾は自ら進んで、まばゆい灯火に飛び込み、焼かれてしまう。
清らかな泉が湧き出し、青々とした草が茂り、
さまざまな飲み物や食べ物に恵まれているのに、
ふくろうはわざわざ腐った鼠の肉だけを好んで食べる。
――ああ、この世の中で、自ら蛾やふくろうのような選択をしていないと、
はっきり言い切れる人は、果たしてどれほどいるだろうか。
「晴空(せいくう)朗月(ろうげつ)、何(いず)れの天(てん)か翺翔(こうしょう)すべからざらん。而(しか)るに飛蛾(ひが)は独(ひと)り夜燭(やしょく)に投(な)ず。清泉(せいせん)緑卉(りょくき)、何(いず)れの物(もの)か飲啄(いんたく)すべからざらん。而るに鴟鴞(しきょう)は偏(ひとえ)に腐鼠(ふそ)を嗜(この)む。噫(ああ)、世(よ)の飛蛾(ひが)鴟鴞(しきょう)たらざる者(もの)は、幾何(いくばく)の人(ひと)ぞや。」
自分では正しいと思ってしている選択も、
実は狭い視野にとらわれた愚かなものかもしれない。
だからこそ、常に客観的に、広い視野で自分を見つめなおす姿勢が必要である。
※注:
- 「翺翔(こうしょう)」…大空を自由に飛び回ること。
- 「緑卉(りょくき)」…青々とした草。自然の豊かな恵み。
- 「飲啄(いんたく)」…飲み食いすること。
- 「鴟鴞(しきょう)」…ふくろう。古代中国では腐った鼠を好むと信じられていた。
- 「飛蛾鴟鴞たらざる者」…蛾やふくろうのように、自ら過ちを選んでいる者ではない人。
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