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■原文(日本語訳)
「私は統治者たちの〔武力・刑罰(ダンダ)〕である。征服を志す王たちの〔政策(ニーティ)〕である。私は秘密事における沈黙である。知識ある人々の〔知識(ジュニャーナ)〕である。」
(『バガヴァッド・ギーター』第10章 第38節)
■逐語訳(一文ずつ)
- daṇḍo damayatām asmi
→ 征服する者たちの中では、私はダンダ(刑罰・武力)である。 - nītir asmi jigīṣatām
→ 征服を志す者の中では、私はニーティ(政策)である。 - maunaṁ caivāsmi guhyānāṁ
→ 秘密の中では、私はまさに沈黙である。 - jñānam jñānavatām aham
→ 知識ある人々の中では、私は知識そのものである。
■用語解説
- ダンダ(daṇḍa):本来は「杖」。ここでは国家による制裁・武力・罰の象徴。統治力を意味する。
- ニーティ(nīti):政策・戦略・道徳・方針。現実的な政略的知恵。
- マウナ(mauna):沈黙。語らずして真理を保つこと。深奥な知識や信頼を示す形。
- ジュニャーナ(jñāna):知識、智慧。精神的・哲学的な真理への理解。
■全体の現代語訳(まとめ)
「私は支配者たちの武力・制裁であり、征服を志す者たちの政策である。私は秘密の中にある沈黙であり、知者の中の知識である。」
■解釈と現代的意義
この節は「静と動」の両面において神性が働くことを示しています。
- 「ダンダ(制裁)」と「ニーティ(政策)」は外的な統治力の象徴。
- 一方、「マウナ(沈黙)」と「ジュニャーナ(知識)」は内的な洞察力と統治を示す。
沈黙は単なる無言ではなく、「必要な時に語らず耐える智慧」。
統治や組織運営の中核には、この沈黙する力と語らぬ戦略が重要です。
■ビジネスにおける解釈と適用
項目 | 現代的応用例 |
---|---|
武力・制裁(ダンダ) | 組織の規律、リーダーの毅然とした判断力、秩序維持のためのルール整備 |
政策・戦略(ニーティ) | 企業の経営戦略、マーケティング方針、交渉における布石と手腕 |
沈黙(マウナ) | 交渉・判断の場面での沈黙戦術、リーダーの含蓄ある沈思、信頼を築く静かな存在感 |
知識(ジュニャーナ) | 問題解決力、専門性、深い洞察力、組織知・ナレッジマネジメントの中心 |
■心得まとめ
「語るべき時を知り、語らぬ時をも知る者が、真の統治者である」
組織の統治には、
厳しさと策略、
沈黙と智慧が必要である。
外における力と、
内における洞察とが、
共にバランスを成す。
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