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美しい風景に学びの心を重ねてこそ、人生は豊かになる

たとえば――
花を育て、竹を植え、鶴と戯れ、魚の泳ぐ姿を静かに見つめる。
それらは、自然と調和する人生のひとつの理想として、山林の隠士たちが楽しむものとされる。

しかし、こうした自然とのふれあいも、
ただ風景に見とれ、物の美しさに心を奪われているだけでは、
なんの本質的な意味も生まれない。

それは儒学で言うところの「口耳の学」――
聞いて口にするだけの浅い学問であり、
釈尊の教えで言うならば、物の実相に触れようとしない「頑空」の心にすぎない。

本当に大切なのは、
風景に感動しながらも、その奥にある自然の理や人生の真理に気づこうとする姿勢だ。
そうしてこそ、美しさは「佳趣(かしゅ)」となり、
人生に深い滋味をもたらしてくれる。


原文とふりがな付き引用

花(はな)を栽(う)え竹(たけ)を植(う)え、鶴(つる)を玩(もてあそ)び魚(うお)を観(み)るも、
亦(また)た段(だん)の自得(じとく)の処(ところ)有(あ)るを要(よう)す。
若(も)し徒(いたず)らに光景(こうけい)に留連(りゅうれん)し、物華(ぶっか)を玩弄(がんろう)せば、
亦た吾(わ)が儒(じゅ)の口耳(こうじ)、釈氏(しゃくし)の頑空(がんくう)のみ。
何(なん)の佳趣(かしゅ)有(あ)らん。


注釈

  • 光景に留連(こうけいにりゅうれん):景色の美しさに心を奪われ、見とれてしまうこと。
  • 物華(ぶっか):自然の美しさ、目に映る物の華やかさ。
  • 口耳(こうじ)の学:聞きかじった知識を口に出すだけの浅い学び。実践や内省を欠いた学問。
  • 頑空(がんくう):仏教で、物の本質を理解せず、空(くう)の概念だけに固執する姿勢。実を伴わない観念主義。
  • 佳趣(かしゅ):深みと味わいのある趣。単なる見た目の美ではなく、精神的な豊かさを含む。

パーマリンク案(英語スラッグ)

see-beyond-beauty
→「美しさの奥にある学びを見る」という教訓をシンプルに表現しています。

その他候補:

  • meaning-in-everything(あらゆることに意味を見出す)
  • not-just-pretty(美しいだけでは足りない)
  • learn-from-nature(自然から学び取る)

この章は、「自然や日常の中に真の学びを見出す力こそが、本当の知性である」と語っています。

1. 原文

栽花種竹、玩鶴觀魚、亦要有段自得處。若徒留連光景、玩弄物華、亦吾儒之口耳、釋氏之頑空而已。有何佳趣。


2. 書き下し文

花を栽(う)え竹を植(う)え、鶴を玩(もてあそ)び魚を観(み)るも、亦(また)た段(ひとくだり)の自得(じとく)の処(ところ)有(あ)るを要(よう)す。
若(も)し徒(いたず)らに光景(こうけい)に留連(りゅうれん)し、物華(ぶっか)を玩弄(がんろう)せば、亦た吾(わ)が儒(じゅ)の口耳(こうじ)にして、釈氏(しゃくし)の頑空(がんくう)のみ。何(なん)の佳趣(かしゅ)有(あ)らん。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「花を植え、竹を育て、鶴と戯れ、魚を眺める──それ自体には、確かに自己充足の境地がある」
  • 「しかし、もし単に光景に酔いしれ、美しいものを表面的にいじくっているだけならば、それは儒者の口先だけの教養であり、仏教徒の空虚な観念にすぎない」
  • 「そこには、何の本当の味わいがあるだろうか?」

4. 用語解説

  • 自得(じとく):自己の心で感じ取り、納得し、楽しむこと。外に依らない内的充足。
  • 留連(りゅうれん):見た目や雰囲気にいつまでも心が引き留められること。
  • 物華(ぶっか):自然や世の中の美しい景物。花鳥風月。
  • 玩弄(がんろう):もてあそぶ。意味なく触れて楽しむこと。
  • 儒の口耳(こうじ):儒学者が口で語り耳で聞くだけの、形式的な学問。
  • 釈氏の頑空(がんくう):仏教者の偏った空論や、実体のない観念への固執。
  • 佳趣(かしゅ):本質的な風雅や趣き。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

花を植えたり、竹を育てたり、鶴や魚を愛でるといった自然とのふれあいには、本来、心を豊かにする深い趣がある。
しかし、もしそれらに心から感応することなく、ただ表面的な美しさに溺れているだけなら、それは教養を語るだけの儒者と、空理空論にとらわれた仏教徒と同じである。
そのような姿勢に、どんな本当の風趣があるというのだろうか?


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「本質を味わう心」「表面的な遊び」**を峻別する重要な価値観を示します。

  • どれほど風雅で高尚に見える行為でも、それが“自得”に至っていなければ、ただの消費・演出にすぎない
  • 形式にとらわれず、自然や物事と真に向き合う「感性」と「心の深さ」が大切
  • 趣味も芸術も仕事も、人から見せるためではなく、自分がそこに「得る」ものがあるかで価値が決まる

7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「形式美ではなく、内発的な価値を追求する姿勢」

  • プレゼン資料のデザインにこだわっても、中身が空なら意味がない
  • サステナビリティやSDGsも、ポーズとして取り入れるだけでは本質を欠く

✅ 「“風景を見ている自分”を見せたがる社会から脱する」

  • SNS時代の“見せるための趣味”は空虚を生みやすい
  • 「この趣味から自分は何を学んだか、得たか」が問われる

✅ 「リーダーシップの“演技”ではなく、“滋養”としての在り方」

  • カリスマ性や言葉の力より、「日々の行動が心を耕しているか」が信頼に繋がる
  • 自得する姿勢のない指導者は、いずれ信頼を失う

8. ビジネス用の心得タイトル

「風景に酔うな、本質を味わえ──“自得”のない趣味は空虚な演出にすぎない」


この章句は、リーダー研修、CSRやESGの理念醸成、パーソナルブランディング研修などで使える深い問いを提供します。

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