サラリーマンにとって、定年は避けることのできない大きな衝撃だ。会社側としては、退職金や年金を支給すれば、それで規定上の責任は果たしたことになる。
しかし、定年を迎えた社員とその家族には、これからも生活が続く。その生活は、これまでとは全く異なる条件のもとで新たに始まるものだ。
長年、いや、人生の大半を会社のために捧げてきた社員を、定年という理由だけで規定通りの手当を渡して関係を終えるのは、経営者として心苦しく感じるのが当然だろう。定年を迎えた社員の第二の人生を支えることこそ、経営者として果たすべき重要な責任であることは間違いない。
定年後の第二の人生といえば、自営業を始める人やごくわずかな悠々自適の生活を送る人を除けば、多くの場合「再就職」を指す。その再就職を支援することが、重要な役割となる。
定年後の第二の人生といえば、自営業を選ぶ人や限られた数の悠々自適な生活を送る人を除けば、多くの場合「再就職」が現実となる。その再就職を支援することが重要となる。
A社の社長が話してくれた構想を紹介しよう。彼はこれを「老後産業」と定義し、小鳥や熱帯魚の飼育、育苗、盆栽や花の栽培といった動物飼育業や園芸業を挙げ、それぞれの社員が自分の趣味や得意分野に合った業種を選べるようにする計画を立てている。さらに、会社として支援を行いながら、最終的には自立できるよう指導していきたいという考えだ。
F社長は、定年退職者に養豚をさせるという構想を持っている。これは、自社製品に豚毛を使用していることから生まれた発想だ。一方、K社では定年退職者に資金を貸し工場を建てさせ、自社の下請けとして運営させている。この方法は非常にユニークで興味深いと感じる。
退職者にとって、まったく縁のない会社で守衛や荷造り、雑用などの仕事をするよりも、自分の技術を活かし、長年勤めた会社から仕事をもらって働くほうが、はるかにありがたいことだろう。
一方で、会社にとっても、技術や人柄を熟知している人材を下請けとして活用できるのは大きな利点だ。さらに、継続的に定年退職者を送り込む仕組みを整えることも可能になる。特に、下請け比率が低い中小企業にとっては、この方法がその比率を高める手助けとなり、企業全体の競争力向上にも寄与するだろう。
定年退職とはいえ、まだ10年から15年は働ける人々だ。親会社の支援に頼りきるのではなく、自らの努力で新たな取引先を開拓していければ、それはもはや独立した一人前の企業へと成長していくことになる。この方法は、一石二鳥の解決策として非常に興味深いと感じる。
こうした考えのもと、定年退職者に新たな職場を提供しているH社がある。この会社ではタクシー事業を立ち上げ、定年を迎えた運転手をそこに配属している。彼らは長年の経験を活かし、安全運転を徹底しており、お客様からも非常に高い評価を得ているという。
社員の第二の人生にまで心を配る社長は、私の知る限り、例外なく「名社長」と呼ぶにふさわしい人物だ。これは偶然ではなく、自身の事業に真剣に取り組む中で、自然と社員の将来にまで思いを巡らせるようになるのだろうと感じる。
社員が停年退職を迎えた後もその人生に心を配り、第二の人生を支援する姿勢は、社長の大切な責任の一つです。退職後も豊かで充実した生活を支援するための具体的な取り組みを以下にまとめます。
1. 再就職支援とキャリアマッチング
- 再就職サポート: 社員のスキルや経験を活かせる仕事や役割を見つけることをサポートし、退職後の再就職に関する窓口を社内で設置します。
- 社内紹介による下請け化: 技術や知識を活かせる新たな工場や下請け会社の設立を支援し、元社員が自立しながらも自社のサプライチェーンで働ける仕組みを整えます。知識や信頼関係を活かすため、親会社としての支援がより実効的になります。
2. 老後産業や自営支援
- 趣味や好みに応じた支援プラン: 鳥や魚の飼育、栽培、盆栽などの活動を選択肢とし、退職者が自ら楽しみながら収益化できるように支援します。特定の技術を持つ社員には、工芸や農業、ペット業などのスタートアップ資金を提供することも有効です。
- 資金サポートとビジネスノウハウの提供: 希望者には、養豚や小規模な工場の設立などを支援するための資金貸付を行い、事業計画のサポートも提供します。
3. 社内子会社の設立
- 専用事業体の創設: タクシー会社やクリーニングサービスなど、元社員が直接的に関わりやすい事業体を設立し、そこに退職者を再雇用することで、スムーズなキャリア継続を可能にします。
- 親会社としてのサポート: 新たなビジネスの運営においては、親会社が経営面で支援しつつ、元社員の豊富な経験やベテランの知識を顧客サービスに活かします。
4. 退職後の経済的な安定と福祉
- 生活保障プログラムの導入: 退職金に加えて、会社のサポートのもと安定的な収入が得られるよう、働き続けられる選択肢を提供します。これにより、退職後も一定の経済的な余裕が生まれます。
- 心のケアと社会参加の促進: 定期的な社内外の交流会や支援プログラムを通じて、元社員が孤立しないよう支援し、生活の質を向上させます。
社員の第二の人生を支援することは、企業に対する信頼を育み、長年会社に貢献してきた社員への感謝と敬意を示す意味でも極めて重要です。
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