簿記や原価計算を学ぶ中で、「予定配賦」という言葉に触れることがあるでしょう。予定配賦は、製造業やサービス業などで間接費を適切に管理し、製品やサービスごとのコストを正確に把握するための手法です。本記事では、予定配賦の基本的な意味や計算方法、実務での活用例について分かりやすく解説します。
予定配賦とは?
予定配賦とは、間接費(製造間接費や一般管理費など)を製品やサービスに割り当てる際に、事前に設定した基準(予定配賦率)を使って配賦する方法です。これは、実際に発生した間接費を基にする実際配賦とは異なり、事前の計画値に基づいて配賦を行います。
特徴
- 計画的な配賦が可能:コスト計算を迅速に行える。
- 予算と実績の比較が容易:差異分析に役立つ。
- 安定したコスト管理:実際配賦に比べ、間接費の変動による影響を抑えられる。
予定配賦の計算方法
予定配賦は、予定配賦率を使って計算されます。
予定配賦率の公式
[
\text{予定配賦率} = \frac{\text{予定間接費}}{\text{予定活動量}}
]
- 予定間接費:事前に見積もった間接費の総額。
- 予定活動量:事前に見積もった作業時間、製造量、直接労務費など、配賦基準となる量。
配賦額の計算式
予定配賦率を基に、個別の製品やサービスに割り当てる配賦額を計算します。
[
\text{予定配賦額} = \text{予定配賦率} \times \text{実際活動量}
]
予定配賦の具体例
例1:製造間接費の予定配賦
ある工場で、年間の予定間接費が1,000万円、予定作業時間が10,000時間と設定されている場合:
1. 予定配賦率の計算
[
\text{予定配賦率} = \frac{\text{1,000万円}}{\text{10,000時間}} = 1,000円/時間
]
2. 配賦額の計算
製品Aの実際作業時間が100時間の場合、製品Aに割り当てられる間接費は以下の通りです:
[
\text{配賦額} = 1,000円/時間 \times 100時間 = 100,000円
]
例2:直接労務費を基準とする予定配賦
年間の予定間接費が500万円、予定直接労務費が2,500万円の場合:
1. 予定配賦率の計算
[
\text{予定配賦率} = \frac{\text{500万円}}{\text{2,500万円}} = 20\%
]
2. 配賦額の計算
製品Bの実際直接労務費が50万円の場合、製品Bに割り当てられる間接費は以下の通りです:
[
\text{配賦額} = 50万円 \times 20\% = 10万円
]
予定配賦のメリットと課題
メリット
- コスト管理の安定性
実際配賦に比べ、予定配賦は間接費の変動の影響を受けにくい。 - 迅速な原価計算
実際のデータを待たずに、事前に設定した基準でコスト計算が可能。 - 差異分析が可能
実際発生額と予定配賦額の差異を分析することで、予算管理や改善策の立案に役立つ。
課題
- 予定と実際の乖離
予定配賦率が実際の間接費や活動量と大きく異なる場合、配賦額が現実と乖離する可能性がある。 - 計算の複雑さ
適切な予定配賦率を設定するには、過去のデータや精密な予測が必要。 - 実際発生額との調整が必要
年末に実際の間接費と予定配賦額の差額(配賦差異)を調整する必要がある。
予定配賦と実際配賦の違い
項目 | 予定配賦 | 実際配賦 |
---|---|---|
基準 | 事前に設定した予定値 | 実際に発生したデータ |
安定性 | 高い | 実際発生額の変動に影響される |
計算の迅速性 | 高い | データが揃うまで計算が困難 |
精度 | 設定次第で変動 | 実際値に基づくため高い |
予定配賦の活用方法
1. 原価計算
製品やサービスごとの原価を迅速に計算するための基準として使用されます。
2. 予算策定
間接費の配分を基に、製品やサービスごとの収益性を予測し、適切な価格設定を行う際に役立ちます。
3. 差異分析
予定配賦額と実際発生額を比較することで、配賦差異の原因を特定し、改善策を立案します。
配賦差異とその対応
配賦差異の発生
予定配賦額と実際発生額が一致しない場合、その差を「配賦差異」と呼びます。これは、予定値と実際値の乖離によって生じます。
配賦差異の公式
[
\text{配賦差異} = \text{実際間接費} – \text{予定配賦額}
]
配賦差異の処理
配賦差異は以下の方法で調整されます:
- 製品原価に振り分け
配賦差異を製品の原価に按分します。 - 損益計算書に計上
差異を費用または収益として損益計算書に計上します。
まとめ
予定配賦は、コスト管理や原価計算において重要な役割を果たす手法です。事前に設定した基準を基に間接費を配分することで、迅速かつ安定した原価計算が可能になります。ただし、実際発生額との乖離を定期的に確認し、適切な差異調整を行うことが必要です。
簿記や管理会計を学んでいる方は、予定配賦の仕組みをしっかり理解し、実務で活用できるようにしましょう!
ご質問や追加の要望があれば、お気軽にお知らせください!
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