宮崎県高原町にある村上木材は、陶器の化粧箱用の製材を専門に行う会社だ。その製材技術の高さに驚かされる。一般的な木材には鋸目が残ることが多く、特に帯鋸の接合部分で生じる深い鋸目が見られるのが普通だ。しかし、村上木材が製造した木材には、そうした鋸目がほとんど見当たらない。
この鋸目の少なさが、村上木材の木材を際立たせるポイントである。一般的な木材は中仕上げを経た後、仕上げの工程に進むため二段階の作業が必要だ。しかし、村上木材の木材は中仕上げを省略できるため、いきなり仕上げ工程に移行できる。この一工程を省けることは、顧客にとって大きな利便性をもたらす。
さらに村上木材では、製品の品質管理が徹底されている。板の厚さが規定に満たないものはすべて除外され、顧客には最高品質の製品だけが届けられる。一部の企業では、意図的に薄い板を混ぜて「アンコ」として出荷し、コストを抑えることで利益を上げる手法をとる場合もある。しかし、村上木材はそうした手法に一切頼らず、正確な厚みと高品質を維持し続けている。その結果、顧客からの信頼が厚く、村上木材は一年を通じて生産が途切れることのないフル稼働を実現している。
この成功の背景には、村上社長が掲げる「顧客第一主義」がある。顧客の利益を最優先に考える姿勢が、村上木材の競争力を高め、絶え間ない需要につながっているのだ。
副産物のオガ屑が新たな市場価値を創出
村上木材の製材技術が生み出す高品質な板材には、ある意外な副産物がある。それは、製材時に発生する粉状のオガ屑だ。一般的な製材所で出るオガ屑は粒状であり、オガライトの材料として低価格で取引されることが多い。しかし、村上木材のオガ屑は粒状ではなく非常に細かい粉状で、この特性が家畜の飼料としての価値を生んでいる。
近年、家畜には高栄養で消化の良い飼料が与えられることが多いが、それにより内臓が過剰に負担を軽減され、逆に弱くなるという問題が指摘されている。そこで、村上木材のオガ屑が注目されている。粉状のオガ屑を飼料に混ぜることで繊維質が内臓を刺激し、家畜の内臓を鍛える効果が期待できるというのだ。
この効果が高く評価され、村上木材のオガ屑は市場で高値で取引されている。他社がわずかな価格でオガ屑を売却する中、村上木材のオガ屑はその10倍の価格で取引されているという。副産物でありながらも、高品質な製材技術の恩恵を受けたオガ屑が、新たな収益源として大きな役割を果たしているのだ。
「顧客第一」の哲学が生む強固な経営基盤
村上木材の成功の根幹にあるのは、村上社長の「顧客第一」の信念である。品質への妥協なき追求と、顧客のニーズに応える柔軟な姿勢が、顧客からの揺るぎない信頼を築いている。その結果、村上木材は常に高収益を維持し、安定した経営基盤を構築している。
顧客の期待を超える製品とサービスを提供することで、企業は市場での優位性を確立できる。村上木材の事例は、それを証明する好例と言えるだろう。
コメント