企業の販売力を強化するうえで、セールスマンの存在は欠かせません。しかし、どのような人材が「適格者」と言えるのかを見極めることは容易ではありません。U社やT社の事例が示すように、従来の「理想的なセールスマン像」とされてきたイメージは、必ずしも成果につながらないのが現実です。
実例から学ぶセールスマン像
真面目さと根気がもたらす成功:U社の事例
U社では、管理部門から販売部門へ配置転換されたG君が驚異的な成果を上げました。口数が少なく、見た目も冴えない彼は、当初営業に向いていないと考えられていました。それにもかかわらず、公共交通機関を駆使し、150店舗を訪問するという地道な努力で、1か月で150万円の売上を達成しました。
この成果を支えたのは、彼の真摯な態度と根気強さでした。華やかなスキルや弁舌ではなく、地道な取り組みこそが信頼を生み、成果へとつながることを証明した例と言えるでしょう。
逆境で輝く「粘り強さ」:T社の事例
T社でも、販売経験のない管理部門の社員が営業現場に動員され、目覚ましい成果を上げました。これらの社員は見た目に華やかさもなく、営業向きではないと判断されていた人々でした。しかし、逆境の中でコツコツと努力を重ねることで、期待以上の結果を出しました。
高度成長期のような「引き合いが豊富な時代」では頭の回転の速さが成果を生む一方、低成長の時代では粘り強さが重要になります。この事例は、状況に応じた資質が異なることを示しています。
適格者に求められる本当の資質
「頭の回転が速く、社交的で弁舌が巧み」という一般的なセールスマン像は、現実の営業活動には必ずしも適していません。このタイプは商談では一時的な成功を収めることがあっても、押し込みがちな手法が顧客に警戒心を抱かせ、長期的な信頼を損ねるリスクがあります。
一方で、実際に成果を上げるセールスマンの多くに共通しているのは以下の特性です:
- 真面目さ
約束を守り、誠実な対応を続けることで、顧客の信頼を勝ち取る。 - 粘り強さ
断られても諦めず、何度も訪問を繰り返すことで成果を得る。 - 控えめな態度
顧客に対して過剰な圧力をかけず、自然な関係を築く。
これらの特性を持つ人材は、派手さはないものの、長期的に安定した成果を生み出すことができるのです。
若手セールスマンがもたらす可能性
A社の事例が示すように、経験豊富なベテランセールスマンよりも、若手のセールスマンが地道に得意先を訪問し、安定した成果を積み上げています。若手セールスマンは上司の指示を忠実に守り、一件一件の小さな受注をコツコツと積み重ねます。このような営業スタイルが、長期的な市場占有率の向上に寄与するのです。
「適格者」の発掘は社内から
適格なセールスマンを外部に求めるのはリスクが伴います。本当に優秀なセールスマンはすでに活躍の場を見つけているため、外部からのスカウトには応じないケースがほとんどです。むしろ、自社の中で適格者を見つけることに目を向けるべきです。
G君のような例が示す通り、真面目で地道な取り組みを続けられる人材は、意外なところに存在するかもしれません。内部の可能性を掘り起こし、適切に育成することが、長期的な成功への鍵となるのです。
結論:粘り強さがセールスの基盤
商売の本質は「飽きない=根気強く続けること」にあります。成功するセールスマンは、訪問活動を徹底し、顧客との信頼を積み上げることを重要視します。時代が変わっても、この基本原則は変わりません。
セールスマンの適格者に求められるのは、華やかなスキルではなく、誠実な姿勢と粘り強い努力です。この特性を持つ人材を発掘し、育成することが、競争が激化する市場での成功を支える基盤となるのです。
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