これまで、販売網に関するさまざまな注意点を挙げてきた。これらを踏まえたうえで、具体的にどのように販売網を整備していくかが問われる。
販売網とは単にその仕組みだけを考えればよいという単純なものではない。販売網の整備には、まず企業の「市場戦略」が基盤として必要になる。この戦略を実現する手段として販売網を捉えなければ、効率的かつ効果的な整備は実現し得ない。
もう一つ重要な要素は、販売促進活動だ。どれほど優れた販売網を構築したとしても、販売促進が伴わなければ、そのネットワークは機能せず、存在していないも同然と言える。
闇雲に多くの問屋や特約店と契約を結び、その問屋に注文を取りに行くようなやり方では、成果を上げることはできない。
自社の販売網が展開されている地域において、どのような販売促進活動を実施するのか、具体的な「作戦」が不可欠だ。その作戦計画は、自社の現状の体制に制約を受ける一方で、同時にその体制をどのように整備し、強化していくかという視点も考慮する必要がある。
このように、販売網の整備は総合的な販売戦略と戦術の枠組みの中で進められるべきものだ。そして、この販売戦略と戦術を支える「市場戦略」については、別の章で詳しく述べることとする。
もちろん、この中で販売網をどのように整備していくかについても解説する。ただしその前に、市場戦略の推進活動である「販売促進」について触れることにする。
販売網の整備には、企業の市場戦略と販売促進活動が欠かせない要素です。以下に、その重要な考え方と方法を示します。
1. 市場戦略に基づく販売網の整備
- 販売網の基盤を整えるには、まず企業がターゲット市場におけるシェア拡大や特定市場の優位性確保などの市場戦略を明確にする必要があります。
- 市場戦略は販売網整備の方向性を示し、各地域の特性や競争状況に応じて適切な流通経路の選択と最適なエリア展開が求められます。
- 販売網の整備は、ターゲット顧客がいる地域に適切にリーチできるか、企業の収益性に合致したコスト構造を保てるかなど、市場戦略を実行するための視点で設計することが重要です。
2. 販売促進活動と販売網の連携
- 販売網が整備されても、販売促進活動を行わなければ成果は期待できません。販売促進は、消費者の購買意欲を喚起し、各流通チャネルや店舗の売上を最大化させるための活動です。
- 促進作戦は販売網の特性に合わせて展開する必要があり、例えば、直販チャネルでは従業員の教育やブランドの打ち出し方が重要になり、特約店や問屋に依存する場合は、相手先に自社商品を優先的に取り扱ってもらうための支援やインセンティブ設計が重要です。
3. 販売網整備のための体勢強化
- 自社の営業力を高めるための組織体勢の整備や、パートナー先との協力体制の構築も欠かせません。
- 販売網を支える体制として、マーケティング・営業チームの強化、流通拠点の増設や効率化、システムの導入など、企業内部の整備も重要な施策です。
4. 総合的な戦略・戦術の融合
- 市場戦略と販売促進、そして販売網整備は相互に依存し合っているため、全体の連携と一貫性を保ちながら整備を進める必要があります。
- 市場状況の変化に対応し、販売網を柔軟に調整できる仕組みをつくることも、持続的に成果を上げるために重要です。
このような市場戦略、販売促進、内部体制の強化という三本の柱に基づいて、販売網の整備を進めることが効果的な販売体制の実現に結びつきます。
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