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販売は社長の役割

「一倉さん、我が社もそろそろ全国的に販路を拡大しようと考えています。それに伴い、販売全般を任せられる営業部長を探しているのですが、もし心当たりがあれば紹介していただけませんか」というB社長からの依頼である。

私は即座に答えた。「社長、それは冗談でしょう。そんな優秀な人材は、すでにどこかの会社で重要なポジションに就いて活躍しているか、独立して自分のビジネスを展開していますよ。どちらにせよ、あなたの会社に来るとは思えません。それどころか、もしもそんな条件で来るような人がいたとしたら、それは『屑』だと思って間違いないでしょう。」

「そんなことよりも、私が本当に言いたいのは、社長自身の考え方が根本的に間違っているということです。販売がなければ事業は成り立ちません。販売こそが事業経営を牽引するエンジンであり、社長であるあなた自身が『販売戦略』を決定し、自ら先頭に立ってその戦略を推進するのが本来あるべき姿です。それを、優秀な販売部長をスカウトしてすべてを任せようなどという考えは、怠慢以外の何ものでもありません。まずは、その考え方自体を根本から切り替えるべきです。」と、私は答えた。

B社長の考え方は、実際のところ多くの社長が抱いている一般的な考え方を代表していると言っていい。どこへ行っても、似たような話を耳にするものだ。「販売は営業部の役割だ。社長である自分は忙しいから、販売の細かいことまで見ていられない」と。しかし、ここで疑問が生じる――社長が忙しいと言う「忙しさ」の正体は何なのか。それは大抵、社長が本来やるべきでない雑用に時間を取られているからに他ならない。

その上で、「信頼できる営業責任者を見つけて任せたい」という願いを抱く社長は多いが、その願いが叶うことはまずない。いや、正確に言えば、それが実現することは絶対にないと言った方が現実的だ。販売の責任を完全に他者に任せる発想自体が、経営者としての本分を見失っているからである。

「販売のことは営業責任者に任せていますので、その人を呼びますから話を聞いてください」と言われることがよくある。どうも、多くの社長は販売に関わることを避けたがる傾向があるようだ。しかし、この姿勢こそが、会社の売上が伸び悩む最大の原因なのだ。

確かに、社長はセールスマンではないのだから、自ら商品を売る必要はない(ただし、会社が危機的状況にある場合は例外だ)。しかし、それを理由に販売を営業部門に丸投げするのは明らかな間違いだ。販売は会社の命運を握る重要な要素であり、それを放置すれば、会社全体が方向性を見失い、最終的には事業自体が立ち行かなくなる。社長が販売に関与しないという選択肢は存在しないのだ。

販売は単に営業部門に任せて済むような軽い問題ではない。それは会社の存続を左右する重大な命題だ。我社の商品が売れなければ、会社そのものが立ち行かなくなるのだから。

販売という重大な命題こそ、社長の基本業務の中核を成すものの一つだ。我社の販売戦略や市場戦略をどのように設計し、販売体制をどう整備して推進するかについて、社長は自ら市場を観察し、多角的な情報を十分に検討した上で、事業目標を達成するための基本方針を決定しなければならない。

当然ながら、社長は自ら販売活動の総指揮を執り、その先頭に立って奮闘する責任がある。しかし、それは社長自身が販売行為を行うことや営業部長の役割を担うことではない。「総指揮を執る」というリーダーシップが求められるのだ。社長がセールスマンのように現場に没頭してしまえば、全体を俯瞰し、指揮を執る立場を失い、組織全体の方向性を見失うことになる。

タイトル:販売は社長の役割—経営者が果たすべき「総指揮者」としての責任


販売を他者任せにしてはいけない理由

多くの社長は、販売活動を「営業部門の仕事」として捉え、自らが現場に深く関与しない傾向があります。しかし、これが事業の成長を妨げ、業績不振を招く原因にもなりかねません。販売こそ事業の命脈であり、販売戦略の方向性を定める「総指揮者」としての役割は社長にあります。なぜなら、売上がなければ、いかに優れた商品やサービスを持っていても企業は存続できないからです。

社長が「総指揮」をとるということ

「販売活動の総指揮をとる」とは、社長がセールスマンとして商品の現場販売を行うことではなく、企業の販売戦略を自ら設定し、全社的にその方針を推進することです。顧客ニーズや市場動向を見極め、事業目標を達成するための戦略を策定し、その実行体制を整えるのが社長の役目です。優れた営業責任者を迎え入れても、社長が販売方針の軸を担わなければ、営業部門はただの実行部隊にすぎません。

「忙しい社長」として販売から目を逸らすリスク

多くの社長が「販売は営業に任せている」と言い、細かな雑務に追われる中で、重要な市場戦略を疎かにしがちです。しかし、事業の浮沈を左右する販売戦略の策定と市場観察は、他の業務よりも優先されるべきです。社長が販売戦略から目を逸らし、任せっぱなしにすることで、会社の競争力を低下させるリスクが増大します。

社長の市場観察力が生む競争力

社長が直接市場に目を向け、顧客や競合の動向を把握することで、事業成長に必要な判断や方向性を決定することが可能になります。社長が販売戦略に携わり、現場の情報を収集しながら指揮を執ることで、販売活動に一貫性が生まれ、営業部門は力強く推進できるのです。


結論

事業経営において、社長が販売戦略を自ら策定し、総指揮を執ることは、企業の成長と存続に不可欠な要素です。販売戦略を他者任せにせず、顧客ニーズを常に見極める姿勢が、長期的な成功に繋がるのです。

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