「良い組織」とは、リーダーが何もかもを直接指示して動かすのではない。
真の統治とは、適材適所に人を配し、それぞれが力を発揮することで自然と成り立つもの。
孔子は、古代の理想的な帝王・舜(しゅん)を引き合いに出してこう語った。
「舜は自ら何かをしていたわけではない。ただ己を慎み、正しく南面(=天子の座)にいた。それだけだ」と。
これは、人を信じ、任せる統治の理想を表す言葉である。
自らを律し、全体の方向を正すことで、人は自然と動く。そういう土壌を整えることが、最も力ある統治となる。
原文とふりがな
「子(し)曰(い)わく、無為(むい)にして治(おさ)むる者(もの)は、其(そ)れ舜(しゅん)なるか。夫(そ)れ何(なに)をか為(な)すや。己(おのれ)を恭(うやうや)しくし、正(ただ)しく南面(なんめん)するのみ」
なにもしないように見えても、実は最も大きな力を働かせていた——それが舜の「無為の治」。
注釈
- 「無為にして治むる」:自ら積極的に行動しないように見えて、結果的に物事が自然と整っていく状態。無為自然の政治哲学。
- 「舜(しゅん)」:中国古代の理想的帝王。徳によって天下を治め、民を導いたとされる伝説的人物。
- 「己を恭しくし」:自分を慎み、礼儀正しくすること。リーダー自身が徳をもって自律していること。
- 「南面する」:天子の座につき、政治を執ること。古代中国では、南向きに座して政(まつりごと)を行うのが王者の定位置だった。
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