― 天に則ることで、徳が世を照らし、文化が栄える
孔子は、古代伝説の聖王・**堯(ぎょう)**の治世について、最大級の賛辞を贈っている。
「大なるかな、堯の君たるや」
――その徳は天の如く広く高く、偉大である。
堯は、自らの考えではなく、**「天=自然の摂理、道理」**を尊重して治めた。
その統治の徳はあまりに大きく、人々は言葉に表すことすらできなかった。
だがその結果、社会は秩序を保ち、
文化は光り輝き、見事に咲き誇った。
孔子は、「支配するのではなく、道に従うこと」が
最高の治め方であると、この堯の姿から読み取っている。
原文と読み下し
子(し)曰(のたま)わく、大(だい)なるかな、堯(ぎょう)の君(くん)たるや。巍巍(ぎぎ)たるかな、唯(た)だ天(てん)を大なりと為(な)し、唯だ堯のみ之(これ)に則(のっと)る。蕩蕩(とうとう)たるかな、民(たみ)能(よ)く之に名(な)づくる無し。巍巍たるかな、其(そ)の成功(せいこう)有(あ)るや。煥(かん)として、其れ文章(ぶんしょう)有(あ)り。
注釈
- 堯(ぎょう):中国古代の理想的な聖王の一人。公平・謙虚で、天下を道に則って治めた。
- 天を大なりと為す:人間の思惑よりも、自然や天の理に従う姿勢を尊重したという意味。
- 則る(のっとる):それに従う。模範とする。ここでは「天=宇宙の秩序・道理」に従った統治を指す。
- 蕩蕩たる:広く深く、清らかで制限のないさま。
- 民能く之に名づくる無し:民衆はその徳をあまりに大きく、言葉で表現することができなかった。
- 煥として其れ文章有り:輝くように文化が栄え、美しさと秩序が世の中にあらわれたという意味。
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