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激しさ・冷たさ・かたさは、人も物事も枯らしてしまう

気性が激しく、落ち着きのない人は、燃えさかる火のような存在である。
その炎は、自分の周囲にいる人々をも巻き込み、焼き尽くしてしまう。

また、思いやりが乏しく、感情の温もりに欠ける人は、
氷のように冷たく、人に触れるたびにその生命力を削いでしまう。

さらに、凝り固まった考えに執着し、柔軟さを持たない人は、
よどんだ水や腐った木のように、何の生命力も伝えられない。

このような三種の性格は、いずれも他者との良い関係を築けず、
事業の成功も、人の幸福ももたらすことができない。
心のあり方は、目に見える力以上に、人生の成果を左右する。


原文とふりがな付き引用

燥性(そうせい)の者(もの)は火(ひ)のごとく熾(さか)んにして、物(もの)に遇(あ)えば則(すなわ)ち焚(や)く。
寡恩(かおん)の者(もの)は氷(こおり)のごとく清(すず)しく、物(もの)に逢(あ)えば必(かなら)ず殺(そ)ぐ。
凝滞(ぎょうたい)固執(こしゅう)する者(もの)は、死水(しすい)腐木(ふぼく)の如(ごと)く、生機(せいき)已(すで)に絶(た)ゆ。
俱(とも)に功業(こうぎょう)を建(た)て、福祉(ふくし)を延(の)べ難(がた)し。


注釈(簡潔に)

  • 燥性(そうせい):気が荒く、短気でせっかちな性格。心に潤いがない状態。
  • 寡恩(かおん):情が薄く、思いやりに欠ける性格。
  • 殺ぐ(そぐ):生気や活力を奪うこと。
  • 凝滞固執(ぎょうたいこしゅう):偏った考えに固執し、柔軟さを欠く。
  • 死水腐木(しすいふぼく):生命の兆しがないもののたとえ。よどんだ水、腐った木。
  • 功業・福祉:人生の成果や、人々に与える幸福・恩恵。

1. 原文

燥性者火熾、遇物則焚。寡恩者氷淸、逢物必殺。凝滯固執者、如死水腐木、生機已絕。俱難建功業而致福祉。


2. 書き下し文

燥性(そうせい)の者は火のごとく熾(さかん)にして、物に遇えば則(すなわ)ち焚(や)く。
寡恩(かおん)の者は氷のごとく清(きよ)くして、物に逢えば必ず殺す。
凝滞(ぎょうたい)固執(こしゅう)する者は、死水腐木(しすいふぼく)の如く、生機(せいき)已(すで)に絶(た)ゆ。
俱(とも)に功業を建て、福祉を致すこと難し。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 燥性者火熾、遇物則焚。
     → 性格が短気で激しい者は、燃え盛る火のようであり、何かに触れればすぐにそれを焼き尽くしてしまう。
  • 寡恩者氷淸、逢物必殺。
     → 思いやりに乏しい人は、清らかであっても冷たい氷のようであり、触れるものを必ず傷つけ、凍えさせる。
  • 凝滯固執者、如死水腐木、生機已絕。
     → 凝り固まって柔軟性を失った人は、死んだ水や腐った木のように、生命の兆しがすでに絶えている。
  • 俱難建功業而致福祉。
     → これらの性質の人はいずれも、大きな仕事を成し遂げたり、福をもたらしたりすることが難しい。

4. 用語解説

  • 燥性(そうせい):気が短く、感情の起伏が激しい性格。
  • 火熾(ひおこり):火が盛んに燃え上がること。激情の象徴。
  • 寡恩(かおん):情が薄く、思いやりがないこと。
  • 氷清(ひょうせい):清らかで潔いことだが、冷たく感情のない比喩。
  • 殺す(ころす):物理的な意味ではなく、感情や関係を凍らせるという比喩的表現。
  • 凝滯(ぎょうたい):物事が滞り、動かないこと。
  • 固執(こしゅう):意見や態度に固くこだわること。
  • 死水(しすい):流れのない腐った水=変化のない心や知性。
  • 腐木(ふぼく):朽ちた木。再生の可能性が失われた比喩。
  • 生機(せいき):生命の兆し、成長や再生の可能性。
  • 功業(こうぎょう):大きな事業や成果。
  • 福祉(ふくし):幸福と利益。自他を潤すもの。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

短気で激しい性格の人は、まるで燃え盛る火のように、触れるものを焼き尽くしてしまう。
思いやりのない人は、どんなに清らかに見えても、氷のように冷たく、触れた者を凍えさせてしまう。
また、頑なで柔軟性を欠いた人は、死水や腐った木のように、すでに成長の可能性を失っている。
こうした人々はいずれも、大きな仕事を成し遂げたり、人を幸福にすることは難しい。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、人間性のバランスと柔軟さこそが成果と幸福を生む条件であると説いています。

  • 情熱が強すぎて自他を焼く人。
  • 冷静すぎて心を閉ざす人。
  • 頑なすぎて変化を受け入れられない人。

いずれも一見「美徳」に見える場合もありますが、極端に傾いた性格は、長期的に人や組織を損なうものとなります。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 燥性(短気・怒りっぽさ)はチームを壊す

熱意がありすぎる人は、時に「圧」や「攻撃性」となって周囲を疲弊させる。情熱は「制御された熱」こそが有効

▪ 寡恩(冷たさ)は信頼関係を築けない

理性や清廉さに優れていても、思いやりや共感の欠けた対応は、人間関係を凍らせ、孤立を招く。

▪ 凝滯・固執は変化の時代に致命的

時代の変化に対応できず、昔のやり方・自分の信念に固執していると、再生のチャンスを自ら閉ざしてしまう。
柔軟さこそが成長の種


8. ビジネス用の心得タイトル

「熱くなりすぎず、冷たくなりすぎず、固まりすぎない──“柔らかい人”が成す、成果と信頼」


この章句は、人間関係でも組織でも、「極端な性質は生を殺す」というバランス哲学を説いています。
穏やかで、温かく、しなやかであること──それが、仕事にも人生にも、最も強く、最も持続する力となるのです。



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