孔子は、どれほど貧しく質素な暮らしであっても、自らが信じる正しい道を生きていれば、そこに真の楽しみがあると語った。
粗末な食事に、水を飲み、肘を曲げて枕にするような生活――それでも心に満ちる充足感がある。
逆に、道に反する行いで得た富や地位は、孔子にとっては「浮雲のようなもの」、つまり一時的で、意味のないものにすぎない。
この言葉は、外的な豊かさではなく、内なる誠実と自分の信念こそが人生の幸福を支えることを、力強く教えてくれる。
原文・ふりがな付き引用
子(し)曰(い)わく、疏食(そしょく)を飯(くら)い、水(みず)を飲(の)み、肱(ひじ)を曲(ま)げて之(これ)を枕(まくら)とす。楽(たの)しみ亦(また)其(そ)の中(なか)に在(あ)り。
不義(ふぎ)にして富(と)み且(か)つ貴(たっと)きは、我(わ)が於(お)いて浮雲(ふうん)の如(ごと)し。
注釈
- 疏食(そしょく) … 粗末な食事、白米に漬物のような質素な食。
- 肱を曲げて枕とす … 枕すらない貧しい生活の象徴。
- 楽亦その中に在り … それでも楽しみは見出せるという、内面からの喜びを強調。
- 不義にして富且つ貴き … 正義に反した手段で得た富や地位。
- 浮雲の如し … 空に浮かび、形を留めずに流れていく雲のように、つかの間で価値のないものという比喩。
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