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■引用原文(日本語訳)
「その知性により、人が美徳と不徳、行うべきことと行うべきでないことを、不適切に理解する時、それは激質的な知性である。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第31節)
■逐語訳
ある人が、
・善(ダルマ)と悪(アダルマ)、
・やるべきこと(カルマ)とやってはいけないこと(アカルマ)
について、
誤った理解(アヤタートマ)をしてしまうとき――
つまり、道徳的混乱や判断のズレをもたらす知性は、
激質(ラジャス)に属する知性である。
■用語解説
- 激質(ラジャス):情熱・欲望・衝動・成果至上主義に起因する性質。
- 知性(ブッディ):判断・理解・識別の力。
- 不適切な理解(アヤタートマ):偏見・欲望・感情に影響された誤った見方。
- 美徳と不徳(ダルマとアダルマ):道義的に正しい行いと、背く行い。
- 行為と不作為(カルマとアカルマ):なすべき義務と、なすべきでない禁忌。
■全体の現代語訳(まとめ)
物事の善悪や行為の是非について、
情熱や欲望に流されて誤った判断を下す知性は、
激質(ラジャス)に属する混乱した知性であるとされる。
この知性は、真の道を見失わせ、自他を誤った方向へ導く危険性を孕む。
■解釈と現代的意義
この節は、現代にも通じる「判断力の誤用」を警告しています。
知識があっても、それが私利私欲・感情・功名心に偏れば、正しさを誤認し、道徳と不道徳、善行と悪行の区別さえつかなくなる。
本来「頭がよい」ことと「正しく判断できる」ことは別――という深い教えです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
コンプライアンス判断 | 利益を優先しすぎて法令や倫理を軽視するのは、ラジャス的な誤った知性の表れ。 |
誤った評価基準 | 成果やスピードだけを見て、プロセスや誠実さを軽視すると、本質を見誤る。 |
動機の混乱 | 自分の出世・利益のために正義をねじ曲げる判断は、組織と人間性を蝕む。 |
戦略の誤認 | 長期的視野よりも目先の成功を求めて誤った決断を下すケース。 |
■心得まとめ
「正しき判断を狂わせるのは、内なる欲望である」
激質的な知性とは、情熱・成果欲・自己正当化に曇らされた思考。
その結果、人は善を悪とし、悪を善とすら思い込んでしまう。
真に必要なのは、冷静さと内省に裏打ちされた識別力である。
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