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頂点に達したら、潔く身を引くのが美徳

物事が行き詰まり、どうにもならなくなったときには、
はじめの志に立ち返って、原点を見つめ直すべきである。
そして、功績を上げ、名声を得たならば、
次にすべきは栄光にしがみつくことではなく、
その後の歩み――自分の末路を冷静に見極めて、
潔く退く覚悟を持つことである。
いつまでも舞台に居続けようとすれば、かえって醜態をさらしかねない。
「功遂げて身退くは、天の道なり」とあるように、
去り際の美しさこそが、本当の人格と知恵を表す。


「事(こと)窮(きわ)まり勢(いきお)い蹙(ちぢ)まるの人は、当に其(そ)の初心(しょしん)を原(たず)ぬべし。
功(こう)成(な)り行(こう)満(み)つるの士(し)は、其の末路(まつろ)を観(み)んことを要(よう)す。」


注釈:

  • 勢蹙まる(せいちぢまる)…物事の勢いが衰え、袋小路に入ったような状態。進退窮まること。
  • 初心(しょしん)…最初の志・原点。なぜそれを始めたのかという出発点。
  • 功成り行満つ(こうなりこうみつ)…目的を達成し、栄誉や結果を得ること。
  • 末路(まつろ)…人生や事業の終わり、晩年、退き際。
  • 「功遂げて身退くは、天の道なり」…老子の言葉。「成功して引く」ことが自然の摂理であり、最上の道とされる。

1. 原文:

事窮勢蹙之人、當原其初心。
功成行滿之士、要觀其末路。


2. 書き下し文:

事(こと)窮(きわ)まり勢(いきお)い蹙(せま)まるの人は、当に其の初心(しょしん)を原(たず)ぬべし。
功(こう)成り行(こう)満つるの士は、其の末路(まつろ)を観(み)んことを要す。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「事窮まり勢蹙まるの人は、当に其の初心を原ぬべし」
     → 物事が行き詰まり、立場が苦しくなっている人に対しては、その人が最初に抱いていた志や動機を汲み取るべきである。
  • 「功成り行満つるの士は、其の末路を観んことを要す」
     → 功績を上げて順風満帆な人物については、その人が最後にどう終わるか(引き際・老後)をよく観察すべきである。

4. 用語解説:

  • 事窮(じきゅう):物事がうまくいかなくなり、行き詰まること。
  • 勢蹙(せいしゅく):勢いが弱まり、苦境に立たされること。
  • 原(たず)ぬ:探る、尋ねる、理解しようとする。
  • 初心(しょしん):当初の志・動機・純粋な気持ち。
  • 功成行満(こうせいこうまん):功績を上げ、すべて順調に満ちている状態。
  • 末路(まつろ):人生や仕事の終わり方、晩年や引き際のこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

困難に直面している人を評価するときには、その人の最初の志を思い起こすことが大切である。
反対に、成功を収めている人を評価するには、その人が最後にどう身を処すか、
つまり“終わり方”を見るべきである。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、**「人を判断するには、単に“今の状態”だけを見るのでは不十分である」**という深い人生観を教えています。

  • 苦しい立場にある人は、失敗だけで評価すべきではなく、その人がどんな思いで行動していたか=初心に立ち返ることで、その人の本質が見えてくる。
  • 成功者や順調な人も、最後まで一貫した姿勢や人格を保てるかで真価が問われる。
     「終わり良ければすべて良し」ではなく、「終わりが悪ければすべてが台無し」になることもある。

→ この章句は、人の“始まり”と“終わり”こそが、その人間の価値を決める重要な視点であることを教えてくれます。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「失敗した社員の“初志”を忘れない」
     ミスや退職、業績不振の背景には、当初の理想や善意があったかもしれない。
     それを理解すれば、評価も支援の方向性も変わる。
  • 「成功している人ほど“引き際”を見よ」
     リーダーやベテラン社員が、成功後に慢心・独善に陥らず、どう退くかを見極めることが、組織の健全性を左右する。
  • 「採用・評価の視点に“過去と未来”を入れよ」
     現状だけで人を判断せず、「どんな動機でここに来たか」「どこに向かっているか」を問い続ける視点が必要。

8. ビジネス用の心得タイトル:

「志を汲み、終わりを観よ──人の価値は始まりと終わりに宿る」


この章句は、「困っている人を一面的に断じず、成功している人を安易に崇めず」──
始まりと終わりの“人間らしさ”に注目することで、本当の評価と共感が生まれるという人生と組織への洞察を与えてくれます。

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