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成果は顧客によって得られるー顧客の視点に立つことの重要性

現代のビジネスでは、顧客の満足が企業の成長を左右するが、現場では「自己本位」や「天動説」が根深く残っていることが多く、これが営業力や販売力を阻害している。

企業が過去の成功体験や慣習に囚われてしまうと、顧客のニーズや市場の変化に対応できず、業績が低迷してしまう。

目次

社長の役割と組織の壁

「工場長がたるんでいるから教育してほしい」と思っている社長は多く、社員にあれこれ要求する前に、まず社長としてやるべきことをやってからいうべきである。

工場が暇な状態では、工場長がたるむのも無理はない。張り切ったところで結果が出るわけではないからだ。だから言った。「今、あなたの会社で最も重要なのは、売上を伸ばすことだ。」

注文が増えれば、工場長だって何も言われなくても張り切らざるを得なくなる。だからこそ、「社長が先頭に立って営業活動に取り組むべきだ」と勧告した。至極当然の話だが、それを実践できていないのが現状なのだ。

ところが、それができないと言うのだ。理由を聞けば、I社長が営業に出ると会長から「社長が工場を空けてフラフラ外を歩き回るとは何事だ。営業は社員に任せて工場を守れ」と叱責されるというのだ。

この状況では、社長が動きたくても動けないのも無理はない。

会長が社長だった戦前は、確かに良いものを作ればお客様の方から買いに来てくれる時代だった。いわゆる「売り手市場」だ。

しかし、戦後の世の中は一変し、完全に「買い手市場」となった。今では、待っていてもお客様が買いに来ることなどあり得ない。それにもかかわらず、会長は未だにその変化に気づいていないのだ。

私は社長に対し、たとえ会長の意に反することになっても、自ら販路を開拓しなければ会社は立ち行かなくなると強く説いた。社長として最も重要な行動は、会社を存続させるために何をすべきかを見極め、それを実行することだ。今、この緊急事態において、その行動とは明確に販売促進と販路開拓に他ならない。

そこで、会長を直接説得できればさらに良いと思い、会長にお目にかかりたいと申し出たところ、今日は親戚の法事で留守だという。留守なら仕方がない。そこで、社長に対し改めて、社長自身が販売促進と販路開拓に取り組むことが何よりも重要であると強調した。そして、その取り組みの結果を必ず報告してほしいと念を押した。外部の情報がほとんど入っていない状況では、具体的にどう動くべきかの判断が難しいからだ。そうした話を重ね、何とか理解を得たところで会社を辞去した

売上が低迷している状態で、利益も出ていない状況で設備投資を行えば、金利負担の増加と借入金の返済という二重の資金圧迫を招くことになる。

一方で、それに見合う収益の増加が見込めない以上、さらなる経営悪化を招く可能性が高いからだ。

顧客志向と時代の変化への対応

問題の本質は専務ではなく、社長にあった。70歳を越える高齢であり、職人気質一筋の人物だった。工場の実権を完全に握っており、専務である息子の意見には一切耳を貸さない状況だった。この体制が会社の進展を阻む大きな要因となっていた。

専務の意見は、私の「顧客志向」の考え方に共感したもので、「我が社のパンが売れない原因は、甘味が強すぎてお客様の嗜好に合っていないことだ」という主張だった。そして、その分析は的確だった。しかし、専務が提案した「もっと甘味を薄くするべきだ」という意見に対して、社長は全く耳を貸そうとしなかった。顧客の求めるものより、自分の職人としての感覚を優先していたのだ。

しかし、S堂の社長には、こうしたお客様の嗜好の変化が全く理解できていなかった。

いや、むしろ、顧客の嗜好について考えたことさえなかったのかもしれない。これまでの職人としての経験や固定観念に縛られ、時代の変化に目を向ける発想が欠けていたのだろう。

このような状況では、どれだけ設備投資をして生産能力を増やしても、根本的な問題が解決しない限り無意味だ。

まずは社長を説得し、甘味の薄い商品を開発・販売することが最優先だ。それが顧客の求めるものであり、売上を伸ばす鍵になる。そして、売上が増加し、会社に余力ができてから初めて設備投資を検討すべきだ。やるべき順序を間違えれば、どんなに努力しても成果は得られない。

事業は顧客あってのものだ――こんな当たり前の原理が、どこかで置き去りにされているのが現実だ。先に挙げた二社は、決して例外ではない。

多くの会社が、顧客の存在を軽視し、顧客のニーズや要求を考慮しないまま、自分たちの考えや都合だけで行動している。

自己中心的な経営姿勢が、事業の根本を揺るがしているのだ。こんな状況では、どれだけ努力を重ねても、真に顧客の心をつかむことはできない。

しかし、この見当外れは何も「シチズン」だけの問題ではない。同じような事例は数多くの会社で見受けられ、いやというほど目にしてきた。

本篇では、こうした顧客のニーズを無視した取り組みや考え方について、随所で触れていくことにする。顧客の視点を欠いた経営が、いかに事業を停滞させるかを具体的に示していきたい

このような見当違いは、単なる包み紙や表面的な問題にとどまらない。それは、販売の本質を全く理解していないことに起因している。

そして、これこそが根本的な問題だ。顧客が本当に求めている価値を見極めず、自己満足に陥った商品やサービスでは、長期的な成功を収めることはできない。

この課題を克服しない限り、どれだけ努力しても本質的な成果には結びつかないのだ。

職人気質で、良いものを作れば自然に売れると信じ込んでいる。販売活動は後回しだ。そのおかげで、こちらとしては販売が実にやりやすい状況なんですよ」。

この言葉には、製品の質だけに固執し、顧客へのアプローチや販売戦略を軽視している業界全体の実態が見て取れる。

販売における差別化が、競争優位を生み出しているのだ。

このように、販売力を重視した経営姿勢が、他社を圧倒する競争力と業界内での強固な地位を築いている。

販売を理解している会社は、このように強い競争力を持つことができるのだ。

事業経営が顧客によって成り立っている限り、最も重要なのは顧客の要求を正確に理解し、それを満たすために自社が何をしなければならないのかを常に考えることだ。

それが、事業成功の根本的な命題であり、どんなに優れた製品を作っても、顧客のニーズに応えられなければ事業は成り立たないという現実を示している。

「製品が良ければ売れる」という職人の信念だけでは、競争の激しい市場で生き残れない。

このように、製品の価値を顧客に伝え、顧客との接点を広げることが、安定的な成長の鍵となります。

企業が成長するためには、顧客の立場からすべての活動を見直すことが必要である。

商品企画から販売、そしてアフターサービスに至るまで、顧客の視点を意識して設計しなければ、持続的な成長は難しい。

企業が「顧客第一」の姿勢を持ち続ければ、どんな過当競争の市場においても、顧客の支持を集め、優位性を保つことができる

そもそも人間という生き物は、本質的に自己中心的な性質を持っている。その結果、どうしても自分を基準に物事を考えてしまい、相手の視点や顧客の立場をつい見失いがちになるものだ。

天動説を超えた販売戦略

例えば、毎年のように配られる手帳の表紙には、決まってその会社名が金文字で刻まれていることが多い。一流企業ならまだしも、知名度の低い中小企業のものとなると、人前で使うには少し気が引ける。中には、旅館名が入ったタオルすら使いたくないという徹底した人も見かけたことがある。

このような間違いを犯すのも、突き詰めれば人間が本来持つ「自己中心的な性質」に由来する。

この自己中心的な発想を、ここでは「天動説」と呼ぶ。

この天動説的な思考こそが、販売活動を徹底的に妨げる要因となるのだ。

だからこそ、「天動説」を捨て、相手や顧客の視点に立って物事を考え、行動することが重要になる。

この姿勢を徹底すれば、自然と存在感が際立つ。企業がこの視点を取り入れて行動に移せば、売上は一気に伸び、業績は驚くほど急成長することになるのだ。

相手の視点に立ち続ける限り、市場や業界の激しい競争の中でも、常に圧倒的な優位性を確保できる。

この「販売戦略」の根底にある基本思想は、まさにこの一点に集約されている。

まとめ

顧客のニーズに向き合い、自己本位の考え方を捨ててこそ、企業は長期的に繁栄できるのです。

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