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盛んな時こそ、慎みを忘れずに

老いてからの病は、若く元気な頃の無理や不摂生が招いたもの。
落ちぶれてからの災いは、順調で勢いがあった時期の驕りや過信の結果である。

だからこそ、満ち足り、順調に思える今こそが、自戒すべきときである。
油断せず、恐れ慎みながら歩むこと――それが君子の道である。

栄えている今にこそ、衰えの種が潜む。
勢いがあるからといって羽目を外せば、いずれその代償はやってくる。


原文(ふりがな付き)

老来(ろうらい)の疾病(しっぺい)は、都(すべ)て是(こ)れ壮時(そうじ)に招(まね)きしものなり。衰後(すいご)の罪孽(ざいげつ)は、都て是れ盛時(せいじ)に作(な)せし的(まと)なり。故(ゆえ)に盈(えい)を持(じ)し満(まん)を履(ふ)むは、君子(くんし)尤(もっと)も兢兢(きょうきょう)たり。


注釈

  • 老来の疾病:年をとってからの体調不良や慢性的な病。若い頃の不摂生のツケとして現れる。
  • 壮時:若く体力に満ちた盛りの時期。現代で言えば30〜40代前後。
  • 罪孽(ざいげつ):過ちや災い。徳を損なう原因、道を誤った結果。
  • 盛時に作せし的なり:順調だったときに蒔いた種が、後に災いとして現れる。
  • 盈(えい)を持し満(まん)を履む:物事が満ちている状態にあること。調子に乗っているとき。
  • 兢兢(きょうきょう)たり:慎重で、恐れをもって振る舞う様。『詩経』に見られる「深淵に臨むが如く、薄氷を履むが如し」の精神。

パーマリンク(英語スラッグ)

  • restraint-in-success(成功時の慎み)
  • prosperity-breeds-risk(盛時にこそリスクあり)
  • beware-when-things-go-well(順調なときほど要注意)

この条文は、「油断大敵」の教えを静かに、しかし深く伝えています。
体力・精神・環境――すべてが満ちている時にこそ、自らを律する目が必要だという哲理は、現代のビジネスリーダーや自己管理にも通じる普遍的な知恵です。

目次

1. 原文

老來疾病、都是壯時招。
衰後罪孽、都是盛時作。
故持盈履滿、君子尤兢兢焉。


2. 書き下し文

老来の疾病は、すべて壮時に招きしものなり。
衰後の罪孽は、すべて盛時に作せしものなり。
ゆえに盈(み)ちを持し、満ちを履むとき、君子はことさらに兢兢たり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 老来の疾病は、すべて壮時に招きしものなり。
     → 老年になって現れる病気は、すべて若く元気な時代の生活習慣によってもたらされたものである。
  • 衰後の罪孽は、すべて盛時に作せしものなり。
     → 衰えてから苦しむ罪や禍いは、すべて栄えていた時代に自らが作り出したものである。
  • ゆえに盈ちを持し、満ちを履むとき、君子はことさらに兢兢たり。
     → だからこそ、成功や充実の中にいる時こそ、君子(立派な人間)は最も慎重で、恐れ慎んで行動するのである。

4. 用語解説

  • 老来(ろうらい):老年期、晩年。
  • 壮時(そうじ):若くて元気な盛んな時期。
  • 罪孽(ざいげつ):罪過、業(ごう)、悪い行いやその報い。
  • 盛時(せいじ):全盛期、力や地位において最も盛んな時期。
  • 盈(えい):満ちること。ここでは「成功」や「繁栄」の象徴。
  • 履満(りまん):満ち足りた境遇を歩むこと=人生の頂点にあること。
  • 兢兢(きょうきょう)たり:細心の注意を払い、慎み恐れているさま。特に「おごらず慎重にする」意。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

老年になって発症する病気は、若い頃の生活の積み重ねによるものであり、
晩年に苦しむ罪や苦悩も、繁栄していた頃に自らが撒いた種である。
だからこそ、人生が最も順調なときほど、立派な人物はより慎重で、恐れをもって自分を律して生きるのである。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「栄えているときこそ慎むべきである」という成功期のリスクと慎みの重要性を説いています。

  • 因果応報の視点:未来の苦しみは現在の行動によって形成される。
  • 慢心への警告:成功しているときほど、思い上がりや油断が災いを生む。
  • 真の君子の姿勢:調子が良いときほど、謙虚で慎み深くあるべし。

7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「成功期こそ“過信”が最大の敵」

売上が伸びているとき、人は自己判断を過信しがちで、リスクや反省を忘れる。
その時期にこそ、「これは本当に正しいか?」と自問する姿勢が必要。

● 「習慣が未来を決める──健康も、倫理も」

働き盛りのときの無理な働き方、付き合い方、食生活などが、将来の健康を蝕む。
同様に、ルール無視やごまかしの習慣が、晩年の信用失墜を招く。
“今の行動”は、未来の自分への贈り物か、災厄か。

● 「君子は、満ちてなお慎む」

プロジェクトが成功したとき、部門の目標を達成したとき──その瞬間こそ、慎重な振る舞いと他者への配慮が必要。
傲慢にならず、感謝と注意をもって振る舞うことで、本当の“長期的成功”が可能になる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「盛りに慢心せず、満ちてなお慎め──未来を決めるのは“今”の行動」


この章句は、**“繁栄と衰退は表裏一体である”**という深い人生観を教えています。
ビジネスでも人生でも、「好調な時にこそ、最も謙虚で慎重であれ」という教訓は、成功を永続させるための普遍的な智慧です。

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