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帝王の身は天下の柱――狩りに慎みを

貞観年間、太宗は狩猟を好んだが、秘書監・虞世南がそれを諫める上奏文を提出した。

虞世南は、まず古来より秋冬における狩猟が伝統として行われてきたこと、そして太宗が民を害する猛獣を倒し、その皮革を軍事資源として活用していることを評価しつつも、
「帝王の身は、四海の民の安寧に直結するものだ」と厳しく戒めた

たとえ形式は古式に則っていようとも、天子自らが猛獣の巣に踏み入り、車に乗り山林を巡るのは危険であり、国家に関わる重大な行動であると説いた。

そして、前漢の司馬相如が武帝に、呉の張昭が孫権にそれぞれ「自ら獣を射るのはおやめください」と諫めた例を引き、
「陛下はすでに多くの獲物を得、功を天下に分かちました。
これ以上の武威は求めず、譲って後人の模範となられたし」と懇願した。

太宗はこれを「深く良き言葉である」と賞賛し、重く受け止めた。


■心得

  • 帝王の身は、国家そのもの。些細な危険も軽んずるべからず
  • 戦うことが勇ではない。慎むことこそ帝の節
  • 狩りの道も度を越せば、政務と国家を損なう

■引用(ふりがな付き)

「黄屋(こうおく)の貴(たっと)さ、金輿(きんよ)の重(おも)さ、
八方(はっぽう)の人は徳を仰(あお)ぎ、万国(ばんこく)の民は心を繋(つな)ぐ。
だからこそ、些細な行動にも深い慎重さが求められるのです」


■注釈

  • 畋獵(てんりょう):狩猟。儒教では節度をもって行うべきとされ、国政の一環として記録される。
  • 黄屋・金輿:天子専用の車・輿。天子の尊貴さを象徴。
  • 袒裼徒搏(たんせきとはく):上衣を脱ぎ、徒手で獣を倒すこと。武勇の極みとされる行動。
  • 虞世南(ぐせいなん):文徳に優れた唐の重臣。諫言の名手として知られる。

■パーマリンク(英語スラッグ)

restraint-in-hunting

その他の候補:

  • sovereign-body-state-risk
  • bravery-is-in-restraint
  • hunt-not-hazard

この章は、帝王の「身体そのものが国の柱である」という重みと、臣下による忠言の価値を端的に示しています。

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