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本来あるべき姿に戻す。それが真の“正しさ”である

孔子は衛の国から故郷・魯の国に戻った際、政治や文化の乱れの中で、まず取り組んだのが**「礼楽(れいがく)」の再建**だった。

当時、魯では儀礼に用いる音楽や舞が混乱し、格式や内容が本来の形から逸脱していた。
これに対し孔子は、根気強く是正に取り組み、ついに本来の「正しい音楽」の形式に戻したと述べている。

「私は衛の国から魯に帰ってきてから、ようやく音楽が正しくなった。
雅(が)は朝廷の儀式で、頌(しょう)は宗廟の祭祀で、それぞれ本来のあるべき形を取り戻したのだ」

ここでいう「音楽」とは、単なる芸術ではなく、**政治と精神を整える“徳の表現”**であり、社会秩序を支える文化装置でもあった。
孔子は、**乱れたものを“元の秩序”に戻すことこそが、真の「正しさ」**であり、それこそが自分の使命だと考えていた。


原文(ふりがな付き)

「子(し)曰(いわ)く、吾(われ)衛(えい)より魯(ろ)に反(かえ)る。然(しか)る後(のち)、楽(がく)正(ただ)しく、雅(が)・頌(しょう)、各(おのおの)其(そ)の所(ところ)を得(え)たり。」


注釈

  • 衛(えい)…孔子が一時期滞在していた国。政治的混乱があった。
  • 魯(ろ)…孔子の祖国。礼楽の伝統があったが、時代とともに形骸化していた。
  • 楽正(がくただ)し…音楽が正しく整ったこと。形式と内容が本来の目的に即した状態を取り戻した意。
  • 雅(が)…朝廷の典礼に使われた儀式音楽。
  • 頌(しょう)…宗廟(祖先を祀る場所)の儀式に用いられた音楽。

原文:

子曰、吾自衞反魯、然後樂正、雅頌各得其所。


目次

書き下し文:

子(し)曰(いわ)く、吾(われ)、衛(えい)より魯(ろ)に反(かえ)る。然(しか)る後(のち)、楽(がく)正(ただ)しく、雅(が)・頌(しょう)、各(おのおの)其(そ)の所(ところ)を得(え)たり。


現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 吾、衛より魯に反る。
     → 私は衛の国から魯の国へ戻った。
  • 然る後、楽正しく、雅頌、各その所を得たり。
     → それ以後、礼楽が正しく整えられ、「雅」と「頌」の楽曲がそれぞれ本来のあるべき位置に収まった。

用語解説:

  • 衛(えい)・魯(ろ):いずれも春秋時代の諸侯国。衛は孔子が一時滞在した地、魯は孔子の出身国。
  • 反(かえる):戻る、帰国する。
  • 楽(がく):音楽、礼楽のうちの「楽」。社会秩序や徳の象徴とされた。
  • 正しく:秩序と道理にかなっている状態。
  • 雅(が)・頌(しょう):古代中国の儀礼音楽の分類。「雅」は王朝の正式な礼楽、「頌」は祖先や神への讃歌。
  • 各其所を得る:本来のあるべき位置・用い方・場に収まること。

全体の現代語訳(まとめ):

孔子はこう言った:

「私が衛の国から魯へ帰ってきて、はじめて礼楽が正しく整えられ、
儀式に用いる音楽である『雅』と『頌』も、それぞれ本来のあるべき場で奏されるようになった。」


解釈と現代的意義:

この章句は、礼楽(=秩序・文化)の再建における孔子の自負と文化観を示しています。

孔子にとって「礼」は社会秩序、「楽」は精神的調和を象徴し、両者が揃ってこそ文明の安定と徳の体現とされていました。
ここで孔子は、自らの帰国が「乱れていた礼楽の秩序を整える契機」となったことを誇りをもって語っています。

つまり、リーダーの復帰=文化と秩序の回復という図式が読み取れます。


ビジネスにおける解釈と適用:

1. 「リーダーの復帰が組織文化の再建を導く」

  • 孔子は「私が戻ってから礼楽が正しくなった」と言うように、
     信頼されるリーダーが戻ることで、組織に秩序と活力が戻ることがある。

2. 「文化の再構築は“本来あるべき場所”に戻すこと」

  • 「雅」「頌」が“本来の場所”を得たように、制度・ルール・役割も「あるべき場所」に整えることで組織が機能する。
  • 無理に新しいことを加えるのではなく、原点回帰・整備にこそ価値がある。

3. “礼”と“楽”のバランス=行動と心の秩序

  • 行動(礼)だけでなく、雰囲気や感情(楽)も整えることが、組織の健全さにつながる。
  • 儀礼的な場の整備(朝会・式典)や文化的コンテンツ(社歌・ビジョンの共有など)も再整備の一環として有効。

ビジネス用心得タイトル:

「本来の場所に戻す力──“秩序ある文化”を整えるリーダーの仕事」


この章句は、文化再建・組織秩序の立て直し・理念浸透などにおいて非常に参考になります。

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