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養うだけでは足りない ― 敬意があってこその孝

親に衣食を与え、世話をするだけでは、本当の意味での孝とは言えない。

それだけでよしとするなら、犬や馬に餌を与えるのと何が違うのか。

親に対して心から敬う気持ちを持ち、接する姿勢にその敬意が表れていてこそ、それは人としての「孝行」である。

形ではなく、心――それが孝の本質である。

親を尊び、心から敬う。その気持ちをもってこそ、孝は生きた徳となる。

目次

原文

子游問孝、子曰、今之孝者、是謂能養、至於犬馬、皆能有養、不敬何以別乎、

「子游(しゆう)、孝(こう)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、今(いま)の孝(こう)は是(こ)れ能(よ)く養(やしな)うを謂(い)う。犬馬(けんば)に至(いた)るまで、皆(みな)能(よ)く養(やしな)うこと有(あ)り。敬(けい)せずんば、何(なに)を以(もっ)て別(わか)たんや。」

現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  1. 「子游、孝を問う」
     → 子游が孔子に「孝とは何か」と尋ねた。
  2. 「子曰く、今の孝は是れ能く養うを謂う」
     → 孔子は言った:「今の世間で言う孝は、ただ親を養うことを意味している。」
  3. 「犬馬に至るまで、皆能く養うこと有り」
     → 「犬や馬でさえも、餌を与えれば飼うことはできる。」
  4. 「敬せずんば、何を以て別たんや」
     → 「もしそこに敬う心がなければ、人と動物の養いは何の違いがあるだろうか?」

用語解説:

  • 子游(しゆう):孔子の弟子の一人。政治や教育に深い関心を持っていた。
  • 孝(こう):親に対する敬意と奉仕。儒教における中心的な徳目。
  • 能く養う(よくやしなう):物質的な扶養・世話をすること。
  • 犬馬(けんば):犬や馬。動物のたとえ。
  • 敬(けい)せずんば:敬意や尊敬の心がなければ。
  • 何を以て別たんや:どうやって区別できようか(反語)。

全体の現代語訳(まとめ):

子游が「孝とは何か」と尋ねたところ、孔子はこう答えた。「今の人々は、親を物質的に養うことが孝だと思っている。しかしそれだけなら、犬や馬でもできる。親を敬う心がなければ、人間の孝と動物の世話とは、どこが違うのか?」

解釈と現代的意義:

この章句は、「本当の孝とは、形ではなく心である」という孔子の本質的な教えです。

  • 単に食べ物や衣服を与えても、そこに敬意がなければ孝とは言えない
  • 「親を養う」とは、生活の世話をすることだけではなく、心から尊重すること
  • 儀礼的・形式的な孝行が本質を失っていることへの、孔子の痛烈な批判が込められています。

ビジネスにおける解釈と適用:

  1. 「形式だけの対応では信頼は得られない」
    • 給与を払っていても、部下や社員を「人として」敬っていなければ、信頼関係は生まれない。
    • 「やってあげている」という態度は、無意識の上下関係を生み、真のチームワークを損なう。
  2. 「本質は“敬意”にある」
    • クライアントや上司・部下への礼儀や対応も、心からの敬意があるかどうかで印象が全く変わる。
    • 単なる“対価”のやり取りではなく、人間としての尊重があるかどうかが問われる。
  3. 「マネジメントは支援であって支配ではない」
    • 物を与える、手配をする、それ自体よりも、「どう接するか」がリーダーとしての評価を分ける。
    • 敬意に満ちた関わりこそが、組織の文化と信頼を育てる。

ビジネス用心得タイトル:

「敬なき支援は、ただの操作──本質は“人としての尊重”に宿る」


この章句は、サービス・介護・接客・リーダーシップなど、“人を扱うすべての現場”に通じる不朽の教えです。

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