真に立派な人物を前にしたとき、その偉大さを素直に認めて「畏敬の念」を抱くこと。これが、自らの気持ちの緩みや傲慢さを抑え、さらに成長するための土台となる。
また、立派な人だけでなく、ごく普通の人々――つまり「小民」に対しても、敬意をもって接することが大切だ。それによって人と広く親しくなれるだけでなく、自分自身が「横暴な人」「尊大な人」と見られることも避けられる。
孔子も、「君子には三つの畏れがある」と述べる。それは「天命」「大人(偉大な人)」「聖人の言葉」であり、これを畏れない者こそ「小人」であるとする。また、「後世(の人)を畏るべし」とも言い、年下であっても学ぶべき人物は敬うべきだと説く。
すなわち、真に伸びる人とは、自分より優れた者を敬い、どんな立場の人にも礼を尽くす人である。
原文と読み下し
大人(たいじん)は畏(おそ)れざるべからず。大人を畏るれば、則(すなわ)ち放逸(ほういつ)の心(こころ)無し。
小民(しょうみん)も亦(また)畏れざるべからず。小民を畏るれば、則ち豪横(ごうおう)の名(な)無し。
注釈
- 畏れる(おそれる):単なる恐怖ではなく、尊敬と謙虚さを込めた「畏敬」の心。心から敬意を抱くこと。
- 大人(たいじん):人格的・社会的に優れた人物。自分を高める鏡となる存在。
- 小民(しょうみん):いわゆる庶民や一般人。地位や立場にかかわらず、人としての敬意を払う対象。
- 放逸(ほういつ):気ままで節度を欠いた態度。敬意を失うことで陥る危うい心。
- 豪横(ごうおう):傲慢で横柄な様子。相手を見下すような態度を指す。
- 孔子の教え(論語・季氏第十六):「君子に三畏有り。天命を畏れ、大人を畏れ、聖人の言を畏る」
「後世畏るべし(年下でも学ぶべき人物には敬意を払うべき)」
パーマリンク(英語スラッグ)案
- respect-brings-growth(敬意が成長をもたらす)
- honor-great-and-humble(偉人にも庶民にも敬意を)
- revere-to-rise(敬してこそ伸びる)
この心得は、成長を望むすべての人に通じる普遍的な教えです。立場に関係なく「敬意のある眼差し」を持ち続けることで、他者の中に学びを見出し、己を高めていく道がひらかれます。
1. 原文
大人不可不畏。畏大人、則無放逸之心。
小民亦不可不畏。畏小民、則無豪橫之名。
2. 書き下し文
大人(たいじん)は畏れざるべからず。大人を畏るれば、則ち放逸(ほういつ)の心無し。
小民(しょうみん)も亦た畏れざるべからず。小民を畏るれば、則ち豪横(ごうおう)の名無し。
3. 現代語訳(逐語・一文ずつ訳)
一文目:
大人不可不畏
→ 目上の人(立派な人・権威者)を畏れることを忘れてはならない。
畏大人、則無放逸之心
→ 大人を畏れる心があれば、わがままやだらしない心は生じない。
二文目:
小民亦不可不畏
→ 一方で、一般庶民(地位の低い人)も畏れることを忘れてはならない。
畏小民、則無豪橫之名
→ 小民を畏れる心があれば、高慢で横暴だという悪評は立たない。
4. 用語解説
- 大人(たいじん):道徳的に立派な人物、または地位や権威のある目上の人。
- 畏(おそ)れる:敬意をもって慎み、慎重に接すること。
- 放逸(ほういつ):わがまま・だらしなさ・節度を失った行動。
- 小民(しょうみん):一般庶民・地位の低い者・弱者。
- 豪横(ごうおう):尊大で横暴なこと。傲慢で人を見下す態度。
5. 全体の現代語訳(まとめ)
目上の人や立派な人物を畏れることを忘れてはならない。そうした敬意を持つことで、自分の心にもわがままや慢心が起きにくくなる。
同じように、地位の低い者や一般の人々をも軽んじてはならない。彼らを畏れる気持ちがあれば、横柄で傲慢な人間だという評判が立つこともない。
6. 解釈と現代的意義
この章句は、**「上下すべての人に対する敬意と慎み」**の重要性を説いています。
- 目上への畏れ=自己の節制
→ 尊敬すべき人を畏れることで、自分自身の行動が正される。 - 目下への畏れ=傲慢の抑制
→ 弱者をも畏れる心があれば、人から「傲慢だ」と批判されることはない。
つまり、「畏れる」ということは、恐れるのではなく、相手に敬意を持ち、自分を律することに通じるのです。
この態度こそが、人格の完成を導き、人望を築く基盤となります。
7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)
●「上司や尊敬すべき先人を“畏れる心”が慢心を防ぐ」
リーダーや先達の存在を真摯に尊重すれば、自己中心的な行動や怠慢な態度を自然に戒めることができる。
●「部下や顧客、現場の声に“畏れ”を持てば謙虚さが育つ」
役職や立場に関係なく、人の声を軽んじることなく受け止める姿勢が、謙虚さと信頼を生む。軽視すれば“横柄”というレッテルが貼られる。
●「敬意は上下双方向で成立する」
リーダーであっても、“下の者が畏れて当然”ではなく、自らが“人を畏れる姿勢”を持つことで、組織に謙虚な文化が浸透する。
●「“人間関係のトラブル”は畏敬の欠如から生まれる」
すべての人間関係の摩擦は、どちらか一方の敬意の欠如に端を発している。常に“畏れる”意識を持つことで、トラブルを未然に防げる。
8. ビジネス用の心得タイトル
「上にも下にも畏敬を──“敬する心”が信頼と人格を築く」
この章句は、人間関係における“上下に向けた謙虚さ”の重要性を説いており、
現代のリーダー論、マネジメント研修、企業倫理教育にも非常に有効な内容です。
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