孟子は、古代の賢王たちは権勢を持ちながらも、善を重んじ、その権力を忘れて賢人を尊敬したと語った。賢王がそのようであるなら、賢人もまた自らの志を楽しみ、権力や地位に左右されることなく道を歩んだ。賢人に対して敬意を示し、礼を尽くさなければ、賢人と接することすらままならない。賢人を臣下に迎えることはなおさら難しく、権力や地位だけではすぐに賢人を手に入れることはできなかった。真のリーダーは、権力に溺れず、常に敬意と礼をもって賢人に接することが求められる。
「孟子曰(もうし)く、古の賢王は、善を好んで勢いを忘る。古の賢士、何ぞ独り然らざらんや。其の道を楽しみて人の勢いを忘る。故に王公も敬を致し礼を尽くさずんば、則ち亟(しばしば)之を見ることを得ず。見ることすら且(か)つ猶お亟するを得ず、而るを況んや得て之を臣とせんや」
「昔の賢王は善を好み、権勢を忘れた。賢人もまた自分の道を楽しんで権勢を忘れた。だからこそ王や公は敬意を払い、礼を尽くさなければ賢人に会うことはできなかった。賢人を臣下に迎えることなど、簡単にはできなかった」
真の権力者は、賢人に対して敬意と礼を尽くすことで、初めて深い信頼と協力を得ることができる。
※注:
「古の賢王」…権力を持ちながらも、道徳を重んじた王。
「賢士」…道を追求し、権力に依存しない賢明な人々。
「敬を致し礼を尽くす」…賢人や他者に対して、心からの敬意と礼儀を尽くすこと。
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