賞与引当金は、企業が従業員に対して支給する賞与(ボーナス)のうち、当期に属する部分を費用として計上し、負債として引き当てる金額を指します。この処理により、賞与が実際に支払われる時期と、その支給対象となる業績が一致し、正確な期間損益計算が可能になります。
この記事では、賞与引当金の基本的な意味、計上基準、計算方法、会計処理、仕訳例、実務上の留意点について詳しく解説します。
賞与引当金とは?
賞与引当金は、従業員に支給する賞与のうち、当期中に従業員が働いた分を見積もって計上する負債勘定です。賞与の支給は翌期になる場合が多いため、期間損益の整合性を保つためにこの引当金が設定されます。
賞与引当金の計上基準
賞与引当金を計上するには、以下の条件を満たす必要があります:
- 支給義務があること
- 就業規則や労働契約書に基づき、従業員に対する賞与支給の義務がある。
- 合理的な見積もりが可能であること
- 支給総額を過去の実績や予定に基づいて合理的に見積もることができる。
賞与引当金の計算方法
賞与引当金の計算は、以下の式に基づいて行います:
計算式
[
\text{賞与引当金} = \text{賞与支給予定額} \times \frac{\text{当期労働期間}}{\text{対象期間}}
]
用語
- 賞与支給予定額
従業員に支給する予定の賞与総額。 - 当期労働期間
当期中に従業員が労働した日数または月数。 - 対象期間
賞与の対象となる労働期間全体。
賞与引当金の会計処理
1. 引当金の計上
当期末に賞与引当金を計上します。
仕訳
賞与引当金繰入額 XXX円 / 賞与引当金 XXX円
2. 賞与支給時の引当金取り崩し
翌期に賞与を支払う際、引当金を取り崩します。
仕訳
賞与引当金 XXX円 / 現金 XXX円
賞与引当金の仕訳例
例題1:引当金の計上
- 賞与の対象期間:2024年1月~12月
- 当期(2024年4月~12月)の労働期間:9か月
- 賞与支給予定額:1,200,000円
計算
[
賞与引当金 = 1,200,000円 \times \frac{9}{12} = 900,000円
]
仕訳
賞与引当金繰入額 900,000円 / 賞与引当金 900,000円
例題2:賞与支給時の取り崩し
- 実際の賞与支給額:1,200,000円
仕訳
賞与引当金 900,000円 / 現金 900,000円
賞与手当 300,000円 / 現金 300,000円
実務での留意点
- 賞与総額の正確な見積もり
- 過去の支給実績や従業員数、業績見通しを基に合理的に見積もります。
- 引当金の見直し
- 期末時点で賞与引当金が過大または過少にならないよう、定期的に見直します。
- 税務上の取り扱い
- 賞与引当金繰入額は、税務上、損金として認められる条件を確認する必要があります(翌期中に支給されることなど)。
- 従業員ごとの詳細な管理
- 部門別や従業員ごとの賞与予定額を正確に把握することが、見積もり精度を高める鍵となります。
賞与引当金のメリットとデメリット
メリット
- 期間損益の整合性
- 当期中に発生した賞与負担を適切に計上することで、財務諸表の信頼性が向上。
- 財務計画の明確化
- 賞与支給に伴う資金繰り計画を立てやすくなる。
- リスク管理
- 賞与負担の事前計上により、財務リスクを把握可能。
デメリット
- 見積もりの不確実性
- 賞与支給額が未確定の場合、計上額に誤差が生じる可能性。
- 税務上の制約
- 引当金繰入額が税務上損金として認められない場合がある。
- 管理の煩雑さ
- 部門や従業員ごとに賞与を細かく見積もる必要がある。
賞与引当金の具体例
例:製造業における賞与引当金計上
- 従業員数:50名
- 賞与総額:5,000,000円
- 当期対象期間:6か月(2024年7月~12月)
- 対象期間:12か月(2024年1月~12月)
計算
[
賞与引当金 = 5,000,000円 \times \frac{6}{12} = 2,500,000円
]
仕訳
賞与引当金繰入額 2,500,000円 / 賞与引当金 2,500,000円
翌期に賞与を支給した場合(支給額が5,000,000円の場合):
賞与引当金 2,500,000円 / 現金 2,500,000円
賞与手当 2,500,000円 / 現金 2,500,000円
まとめ
賞与引当金は、従業員に支給する賞与を合理的に見積もり、当期中に計上することで、財務諸表の正確性を高める重要な会計処理です。適切な見積もりと管理を行うことで、企業の財務状況を正確に反映し、賞与支給に伴う財務リスクを軽減できます。
実務では、賞与総額の見積もり精度を高め、定期的に引当金を見直すことが重要です。また、税務上の要件を確認し、適切な申告と処理を行うことで、財務計画を安定化させましょう。
以下は「賞与引当金」に関する解説と具体例を含めた内容です。
賞与引当金とは
賞与引当金は、次期に支給予定の賞与のうち、当期中に発生している分を費用として計上し、将来の支払いに備える引当金です。
- 目的:会計期間と賞与の計算期間が異なる場合、発生主義に基づいて当期の費用として計上します。
- 処理タイミング:主に決算時に設定し、支給時に引当金を取り崩します。
賞与引当金の処理
1. 決算時の引当金設定
仕訳の基本ルール
- 費用の計上:「賞与引当金繰入(費用)」として借方に記録。
- 負債の発生:「賞与引当金(負債)」として貸方に記録。
【例1】賞与引当金の設定(決算時)
取引内容
当期の賞与引当金繰入額は1,000円。
仕訳
借方:賞与引当金繰入 1,000円
貸方:賞与引当金 1,000円
2. 賞与を支給したとき
賞与引当金内での支払い
- 設定した賞与引当金を取り崩して処理します。
賞与引当金を超過した場合
- 引当金を取り崩した後、超過分を「賞与(費用)」として処理します。
【例2】賞与を支給したとき
取引内容
賞与1,500円を当座預金口座から支給した。賞与引当金の残高は1,000円。
仕訳
借方:賞与引当金 1,000円
賞与 500円
貸方:当座預金 1,500円
賞与引当金の設定と支払いの流れ
項目 | 処理内容 | 対応科目 |
---|---|---|
引当金の設定 | 次期支給予定の賞与のうち、当期発生分を計上。 | 賞与引当金繰入(費用)、賞与引当金(負債) |
引当金内での支出 | 賞与支払いを引当金で処理。 | 賞与引当金(負債) |
引当金超過分 | 超過分は当期の費用として処理。 | 賞与(費用) |
実務上のポイント
- 賞与計算期間の確認
賞与の計算期間と会計期間が異なる場合、次期支給分であっても当期発生分を適切に計上します。 - 引当金残高の管理
引当金が適切に設定されているか、支給予定額と比較して過不足がないか定期的に確認します。 - 役員賞与の取扱い
役員賞与は法人税法上、損金不算入とされる場合があるため、別途管理が必要です。
賞与引当金を適切に設定・処理することで、賞与費用の適切な配分が可能となり、企業の財務情報がより透明で正確なものになります。
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