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年月が経っても、心を新たにし、見えぬところこそ誠実に

人とのつながりにおいて、大切にしたい三つのことがある。

一つは、昔からの友人と付き合うときこそ、初めて会ったような新鮮な気持ちで接すること。年月を経ても意気は新しくありたい。
二つ目は、人目につかない事柄に対してこそ、むしろ心と行動を一層誠実で明らかに保つこと。
そして三つ目は、年老いた人に対しては、恩義と礼儀をよりいっそう厚くすべきであるということ。

人はともすれば、親しき仲や隠れた場面、衰えた相手に対して気を抜いたり軽んじたりしがちである。
だが孔子もまた、「老者は之を安んじ、朋友は之を信じ、少者は之を懐けん」と述べ、
年長者には安らぎを、友には信頼を、と人としての礼と愛を説いた。

まことの徳は、目立つ場面ではなく、このような「日常の人間関係の中」にこそ試される。


原文(ふりがな付き)

「故旧(こきゅう)の交(まじ)わりに遇(あ)いては、意気(いき)愈(いよい)よ新(あたら)たなるを要(よう)す。
隠微(いんび)の事(こと)に処(しょ)しては、心迹(しんせき)宜(よろ)しく愈(いよい)よ顕(あら)らかなるべし。
衰朽(すいきゅう)の人(ひと)を待(たい)つには、恩礼(おんれい)当(まさ)に愈(いよい)よ隆(さかん)なるべし。」


注釈

  • 故旧(こきゅう):昔なじみの友人。長い付き合いのある知人。
  • 意気愈新(いきいよいよあたらし):気持ちをますます新しく保つこと。慣れすぎてなれ合いにならぬように。
  • 隠微(いんび):人目につかないところ。秘密や私的な場面。
  • 心迹(しんせき):心の持ちようと、それに基づいたふるまい。
  • 衰朽の人(すいきゅうのひと):年老いた人、または衰えてきた人。
  • 恩礼(おんれい):思いやりと礼儀。敬意と情愛のこもったふるまい。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • renew-old-friendships(古き友と心を新たに)
  • integrity-in-private(隠れた場面での誠実さ)
  • honor-the-elderly(年長者を敬う)

この条は、人生のなかで「見過ごされがち」な場面にこそ、誠実さや優しさの本質が現れることを教えてくれます。
人間関係を長く温かく保つための秘訣が、しずかに、そして深く語られている一節です。

1. 原文

故舊之交、意氣愈新。
處隱微之事、心迹宜愈顯。
待衰朽之人、恩禮當愈隆。


2. 書き下し文

故旧(こきゅう)の交(まじ)わりにおいては、意気(いき)愈(いよいよ)新たなるを要(よう)す。
隠微(いんび)の事に処(しょ)しては、心迹(しんせき)宜(よろ)しく愈(いよいよ)顕(あら)わるべし。
衰朽(すいきゅう)の人を待(たい)するには、恩礼(おんれい)当に愈(いよいよ)隆(さか)んなるべし。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)

  • 「故旧の交わりにおいては、意気愈新たなるを要す」
     → 古くからの友人との関係は、時間が経っても気持ちがより新鮮であるよう努めるべきだ。
  • 「隠微の事に処しては、心迹宜しく愈顕らかなるべし」
     → 人の目に触れないような隠れた事柄にこそ、自分の心と行いはますます明らかであるべきだ。
  • 「衰朽の人を待するには、恩礼当に愈隆んなるべし」
     → 老いや病により弱った人に対しては、いっそう丁寧で温かい礼遇をもって接するべきである。

4. 用語解説

  • 故旧(こきゅう):昔からの友人、旧知の仲。長年の付き合い。
  • 意気(いき):気持ち、情意、誠意。
  • 隠微(いんび):人の目につかない、内密なこと。微細で目立たない出来事。
  • 心迹(しんせき):心のあり方とその表れ、行動の跡。
  • 衰朽(すいきゅう):老いて衰え、弱っている人。肉体的・社会的に衰退した人。
  • 恩礼(おんれい):思いやりのある礼儀・もてなし。
  • 隆(さかん)なる:盛んにする、厚くする。手厚い様子。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

長く付き合ってきた友人には、むしろより新鮮で誠意ある心で接するようにしなければならない。
人の目に触れないような場面においてこそ、自分の心の清らかさと行動の誠実さをはっきりと示すべきである。
老いたり衰えたりした人には、むしろ一層厚く、思いやりある礼を尽くすことが求められる。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「関係性・誠実さ・思いやり」**における理想的な態度を説いています。

  • 友情は時間とともに“惰性”ではなく“刷新”が必要である
     → 古い友人ほど“今も変わらぬ誠意”が求められる。
  • 目に見えない場面こそ“真価”が試される
     → 誰も見ていないときにこそ、人の本質が表れる。
  • 弱い立場の人には“厚い恩礼”で応える
     → 老人・病人・社会的弱者にこそ、丁寧で心ある対応を。

これはつまり、**「時間が経つほどに誠実さを深め、目立たないところで品性を磨き、弱者にこそ温かくあれ」**という、東洋的な倫理の精髄を示した句です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「古くからの取引先や仲間ほど、より丁寧な関係を」

  • 長年の関係に甘えず、むしろ“新たな誠意”で接することが信頼を持続させる鍵。
  • 例:定期的な感謝の表明、小さな気遣いの積み重ね。

●「“見えないところ”の行動がブランドを作る」

  • 倫理・コンプライアンス・内部統制など、社外には見えない行動こそ、企業の信頼の基盤。
  • ゴマカシやご都合主義を排し、誠実さを保つ姿勢が長期的価値を生む。

●「高齢社員や退職者、病欠者への敬意が企業文化を作る」

  • 生産性中心で切り捨てるのではなく、貢献者や弱者への礼遇が、“人を大切にする組織”という信頼を形成する。

8. ビジネス用の心得タイトル

「旧き縁こそ新しく、隠れた場こそ誠実に、弱き者にこそ厚くあれ」


この章句は、「関係が古くなるほど、誠意は新たに」「目に見えぬところでこそ徳が問われる」「力のない人にこそ温かく」という、人間性の成熟に向けた行動指針を与えてくれます。

組織や社会の中で人と関わるすべての人にとって、心に留めておくべき珠玉の教えです。

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