喜びのために、そして覚悟のために
孔子は、親の生年月日や年齢を「知っておくべきもの」として明言した。
その理由は二つある――
一つには、年を重ねることを共に喜び、長寿を祝い、健やかでいてくれることへの感謝を示すため。
もう一つには、年老いた親がいつか離れてしまうかもしれないことを心にとどめ、
その命の時間を大切に扱い、丁寧に接するためである。
何気ないようでいて、親の「命の重さ」や「限りある時間」への深い思いがにじむこの言葉は、
孝とは形式ではなく「心構え」だということを教えてくれる。
原文とふりがな付き引用
子(し)曰(いわ)く、父母(ふぼ)の年(とし)は知(し)らざるべからざるなり。
一(いち)には則(すなわ)ち以(もっ)て喜(よろこ)び、
一には則ち以て懼(おそ)る。
長く生きてくれていることを喜び、
いつか別れがくることを心にとめる――
それが親を思う人の心得である。
注釈
- 父母の年…親の年齢、生年月日。ここでは具体的な数字としての情報というよりも、「親の命の時間」という意識を含む。
- 知らざるべからざる…知らないままでいてはならない。日々、意識しておくべき事柄。
- 以て喜ぶ…長寿を祝い、健康を喜び、親の存在をありがたく思う心。
- 以て懼る(おそる)…老いや死を意識することによって、限りある時間を大切にし、今を誠実に尽くす心。
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