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親の年を知ることは、感謝と覚悟のあらわれ

喜びのために、そして覚悟のために

孔子は、親の生年月日や年齢を「知っておくべきもの」として明言した。
その理由は二つある――
一つには、年を重ねることを共に喜び、長寿を祝い、健やかでいてくれることへの感謝を示すため。
もう一つには、年老いた親がいつか離れてしまうかもしれないことを心にとどめ、
その命の時間を大切に扱い、丁寧に接するためである。
何気ないようでいて、親の「命の重さ」や「限りある時間」への深い思いがにじむこの言葉は、
孝とは形式ではなく「心構え」だということを教えてくれる。


原文とふりがな付き引用

子(し)曰(いわ)く、父母(ふぼ)の年(とし)は知(し)らざるべからざるなり。
一(いち)には則(すなわ)ち以(もっ)て喜(よろこ)び、
一には則ち以て懼(おそ)る。

長く生きてくれていることを喜び、
いつか別れがくることを心にとめる――
それが親を思う人の心得である。


注釈

  • 父母の年…親の年齢、生年月日。ここでは具体的な数字としての情報というよりも、「親の命の時間」という意識を含む。
  • 知らざるべからざる…知らないままでいてはならない。日々、意識しておくべき事柄。
  • 以て喜ぶ…長寿を祝い、健康を喜び、親の存在をありがたく思う心。
  • 以て懼る(おそる)…老いや死を意識することによって、限りある時間を大切にし、今を誠実に尽くす心。

1. 原文

子曰、父母之年、不可不知也。一則以喜、一則以懼。


2. 書き下し文

子(し)曰(いわ)く、父母(ふぼ)の年(とし)は、知らざるべからざるなり。
一(ひと)つには則(すなわ)ち以(もっ)て喜(よろこ)び、一(ひと)つには則ち以て懼(おそ)る。


3. 現代語訳(逐語・一文ずつ)

  • 「父母の年は知らざるべからざるなり」
     → 両親の年齢は、常に意識していなければならない。
  • 「一には則ち以て喜び」
     → 一つには、親が長生きしてくれていることを嬉しく思うからであり、
  • 「一には則ち以て懼る」
     → 一つには、親が年老いていることに対して、死別の時が近づいていることを恐れ慎むからである。

4. 用語解説

用語解説
父母の年両親の年齢。単なる数字ではなく、親の老いを自覚し、心に留めるべき対象。
知らざるべからず必ず知っておかねばならない。記憶・関心・感謝の対象として常に意識すべき。
喜び親が無事に生きていること、年齢を重ねることへの慶び。
懼る(おそる)恐れる、慎む、失うことへの不安を含む感情。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孔子はこう語った:

「両親の年齢は、決して忘れてはならないものである。
その理由は二つある。
一つには、両親が今も無事でいてくれることを喜び感謝するためであり、
もう一つには、老いが進んでいることを自覚し、その別れが近づいていることを心に留めておくためである」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「孝」とは“現在”の親を大切に思う心と、“未来”の別れを覚悟する心の両面で成り立つという、
孔子の深い人間観・倫理観を表現しています。

  • 単に“長寿を祝う”のではなく、親が生きていることを常に感謝と覚悟の両面で受け止めることが真の孝である。
  • 親の年齢を意識することで、日々の関わりの質が変わる(丁寧になる、優しくなる、感情的にならない)
  • “喜び”と“懼れ”という二重の感情は、愛情と儚さを両立する成熟した孝の姿勢を示している。

7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「身近な存在の“有限性”を意識せよ」

  • 親に限らず、上司・部下・仲間も“いつまでも共にいるとは限らない”という前提に立てば、
    感謝・尊重・誠実な対応が自然と増す

✅ 「人への敬意は“今、そこにいること”への気づきから始まる」

  • 「当たり前に存在してくれる人」が“当たり前ではない”と気づけたとき、
    人間関係の深まりと信頼の厚みが生まれる

✅ 「リーダーシップは、“見送る覚悟”を持った関係性を築けるかにかかっている」

  • 一緒にいる時間が有限だと知るリーダーは、育成にも人間関係にも“真剣さと優しさ”が宿る

8. ビジネス用の心得タイトル

「喜びと懼れのあいだに孝がある──“いま在ること”への敬意が、人を深める」
〜有限性を知る者は、日々を丁寧に生きる〜


この章句は、“いまここに親がいる”という何気ない事実に、喜びと儚さの両面から向き合うことの価値を教えてくれます。

親に限らず、私たちの周囲の人々もまた「永遠ではない」存在。
その事実に気づき、感謝と配慮と覚悟をもって接することが、
真の「孝」であり、「人としての成熟」の道でもあるのです。

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