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自分の善行は忘れ、他人の恩は忘れぬ心を持つ

人にしてあげたことはすぐに忘れ、人にしてもらったことは忘れない。
この逆を行うと、人の徳は損なわれ、心の美しさも曇っていく。

人に恩を施しても、それを記憶し誇るべきではない。
逆に、自分がかけた迷惑は忘れず、反省し、改める気持ちを持つべきである。
また、人から受けた恩義は心に深く刻み、必ず感謝を忘れぬこと。
しかし、人に対する恨みは、早く心から手放すべきである。
これこそが、人間関係を正しく築き、心豊かに生きるための根本である。


原文とふりがな付き引用

我(われ)、人に功(こう)有(あ)らば念(おも)うべからず、而(しか)して過(あやま)ちは則(すなわ)ち念(おも)わざるべからず。
人(ひと)、我(われ)に恩(おん)有(あ)らば忘(わす)るべからず、而(しか)して怨(うら)みは則(すなわ)ち忘(わす)れざるべからず。


注釈(簡潔に)

  • 功(こう):他人のために尽くした労(ろう)。誇りに思いたくなるが、見返りを求める心を戒める。
  • 過ち(あやまち):自分が他人にかけた迷惑・過失。責任を持って忘れず、省みる。
  • 恩(おん):他者から受けた好意・助け・徳義。感謝し、心に留める。
  • 怨み(うらみ):負の感情。持ち続ければ心を濁らせるため、早く手放すべき。

1. 原文

我有功於人不可念。而過則不可不念。人有恩於我不可忘。而怨則不可不忘。


2. 書き下し文

我(われ)、人に功(こう)有らば念(おも)うべからず。而(しか)して過(あやま)ちは則(すなわ)ち念わざるべからず。
人、我に恩(おん)有らば忘(わす)るべからず。而して怨(うら)みは則ち忘れざるべからず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 我有功於人不可念。
     → 私が人に対して功績(善行)を施したとしても、それを心に留めてはならない。
  • 而過則不可不念。
     → しかし、自分の過ちについては、忘れずに覚えておかねばならない。
  • 人有恩於我不可忘。
     → 他人が私に恩を施してくれたならば、それは決して忘れてはならない。
  • 而怨則不可不忘。
     → しかし、人に対する怨みは、必ず忘れなければならない。

4. 用語解説

  • 功(こう):人に与えた恩恵、助けた行為、立てた功績。
  • 念(おもう):ここでは「心に留める、記憶にとどめて意識する」という意味。
  • 過(あやまち):自分の犯した過失、非、ミス。
  • 恩(おん):人から受けた好意、支援、助力。
  • 怨(うらみ):人に対して抱く怒りや復讐心、負の感情。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

自分が他人に尽くしたことは心に留めず、自分の過ちだけは忘れず反省すべきである。
また、他人から受けた恩は生涯忘れずにいるべきだが、怨みは早く忘れるようにしなければならない。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「徳の実践における心構えの黄金律」と言えるものです。

人間関係の中では、「自分の功績に酔わず」「自分の非を忘れず」「他人の恩を尊び」「怨みは水に流す」という、極めて高い倫理基準を提示しています。

つまり、自己中心的な評価軸ではなく、謙虚さと感謝に基づく内面の鍛錬を通して、人間的成熟を目指す生き方です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 自分の貢献は「当然」として捉える

チームへの貢献や功績を声高に主張しない人ほど、真に信頼される存在です。評価は自分が言うのではなく、他人が決めるもの。

▪ 過ちは繰り返さぬよう「記録」と「振り返り」を忘れない

反省すべきは「他人のミス」ではなく「自分の失敗」。PDCAを回すときは、過ちの棚卸しを習慣化すべきです。

▪ 上司・先輩・顧客からの支援は、決して「当然」と思わぬこと

恩義に報いる行動は信頼と評価の基礎です。義理や礼を重んじる姿勢が、社外関係でも高く評価されます。

▪ 怨みを持ち越さない=建設的な人間関係の鍵

ネガティブな感情を引きずる人は、組織のムードを悪化させます。必要なのは、「水に流す力」「前向きに動く力」。


8. ビジネス用の心得タイトル

「功を誇らず、過ちを忘れず。恩は忘れず、怨みは手放す──成熟した信頼はそこに宿る」


この章句は、「謙虚・感謝・寛容」を軸とした人間関係の基礎的な哲理を語っています。
とくにリーダーや経営者にとっては、「恩を返す姿勢」「過ちを率直に認める勇気」「怨みを抱えずに再建する力」が、人の上に立つために欠かせぬ徳目となるでしょう。



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