社会はさまざまな法規によって縛られている。だからこそ、新しい技術を開発する際には、まず最初に「法規がどうなっているか」を確認する必要がある。
特にアメリカを対象とする場合、真っ先に独占禁止法を確認する必要がある。例えば輸出価格に関しても、他国への輸出価格よりも一セントでも高く設定しておかなければならない。
これを怠れば、独占禁止法違反で訴えられるリスクが常につきまとう。それほど厳しい状況だ。特許は誰もが注意を払う部分だが、関連する法規は特許だけにとどまらない。他にも多岐にわたる規制が存在する。
ある会社が開発中の無線式盗難防止装置に関する話だが、念のため「電波法に抵触しないのか」と尋ねたところ、その点はまったく考慮されていなかったらしい。開発を始めてからすでに2年が経過しているにもかかわらず、この有様だ。
電波法に抵触する場合、周波数の割当を受けなければ使用は許されない。調べたところ、出力が小さいため規制の対象外だと分かった。しかし、実用テストを進めるうちに、それでは出力が不足していることが判明した。電波の到達距離が短すぎるのだ。そこで出力を増やすことになったが、今度は電波法の規制に引っかかることがすぐに明らかになった。
G社が開発した業務用の大型吸気式掃除機には、手元スイッチに特別な仕様が求められていた。その結果、自社製スイッチを採用する方向で話が進みかけていた。
ところが、発注の段階になって、電気製品には通産省の「型式認定」が必要であることを、新しく雇った技術顧問に指摘された。そこで検討を重ねた結果、このスイッチは専門メーカーに製造を依頼することになった。結局のところ、餅は餅屋に任せるのが最善だったというわけだ。
ある町の発明家が重金属凝固剤を開発した。工場廃水処理の際、重金属を沈殿させた汚泥にこの凝固剤を加えると、汚泥が固まる仕組みだという。
この発明家も「天動説」の信奉者だったようだ。重金属汚泥の処理に困っている業者が次々と押し寄せてくると信じて疑わなかったのだろう。そこで、早々に会社を立ち上げ、パンフレットまで作成したのだった。
しかし、この製品はまったく売れなかった。その理由は明白だ。産業廃棄物の処理方法は法令で厳格に定められているからだ。重金属を含む廃棄物は、地中に深く穴を掘り、コンクリート容器などに密閉して外部に漏れないように処理する必要がある。この方法が義務づけられている以上、発明家の凝固剤の出番はなかったのだ。
そのため、たとえ凝固させたとしても、それを結局は密閉容器に入れる必要がある点に変わりはない。これでは、凝固させる意味がまったくない。単に金と手間が二重にかかるだけで、何の利点もないのだ。
自動車で信号のない交差点に差し掛かった際、左右の見通しが悪いことに困ることは多い。この問題に着目した町の発明家が開発したのが、特殊なサイドミラーだった。マスコット部分に三角柱型のミラーを取り付けることで、左右の見通しを確保しようという発想だ。しかし、このアイデアには「道路交通法」という大きな壁が立ちはだかった。
厄介なのは「薬事法」だ。商品に医療効果を具体的に謳ったキャンペーンはすべてこの法律に抵触し、許されない。対象は医薬品だけにとどまらず、薬用酒やクロレラ、マグネット製品にまで及ぶ。どれだけ面倒だろうと、腹立たしく思おうと、この法律に従わなければ販売することはできない。
だからこそ、新商品や新事業を計画する際には、まず最初に関連する法規を徹底的に調べる必要がある。専門家や官公庁に問い合わせれば、必要な情報は手に入るのだから、これを怠るわけにはいかない。
せっかく貴重な金や時間、労力を費やして開発した商品が売れないとなれば、これほど無駄なことはない。ほんの少しの配慮で済む話なのだから、無駄骨を折らないためにも、この点を忘れてはならない。
「関連する法規はどうなっているか」というテーマでは、技術開発や新商品の販売に際して、法規の確認がいかに重要であるかが強調されています。以下は主な要点です。
1. 法規の確認が最優先
新しい技術や商品を開発する際、最初に「法規に違反しないか」を調べる必要があります。特にアメリカ市場など、海外での展開を目指す場合は独占禁止法や現地の規制への対応が重要で、輸出価格の設定なども独禁法に抵触しないような工夫が必要です。たとえ技術的に優れたものであっても、法的に許可されなければ市場に投入できず、無駄な投資になってしまう可能性があるためです。
2. 法規に対する事前調査の事例
- 興人のコーデラン技術:アメリカ市場に売り込む際、アメリカの独占禁止法の制約に触れて、許諾契約が無効になってしまった例が挙げられています。これにより、会社の期待していた収益が失われてしまったことから、事前に法規の調査がいかに重要かを示しています。
- G社の無線式盗難予防器:開発途中で電波法に抵触する可能性が浮上し、出力を調整するなどの対応が必要になりました。このように、電波法のような規制は製品の性能に直接影響を与えるため、開発初期からの考慮が欠かせません。
3. 各業界固有の法規
開発する商品によっては、それぞれに特有の法規が関係する場合があります。以下は具体例です:
- 通産省の型式認定(家電など):G社の吸気式掃除機に必要だった手元スイッチが通産省の型式認定を得る必要があり、法規に適合しなければ販売が不可能でした。
- 産業廃棄物の処理法:重金属凝固剤の発明者が法律を確認しなかったために、法規に適合しない商品となり売れませんでした。
- 道交法:自動車のサイドミラーに関する開発で、交通安全上の法律(道路交通法)に抵触してしまった例が挙げられ、道交法によって安全基準が明確に定められていることの重要性が示されています。
- 薬事法:医療効果を謳った商品(薬用酒や健康食品など)は薬事法の規制対象となり、表示や宣伝方法が厳しく制限されます。
4. 専門家や公的機関への相談
専門的な法規の確認は、弁護士や専門家、もしくは直接官公庁に相談して確認することが不可欠です。どんなに優れた商品でも、法規に適合しなければ市場での販売はできないため、事業計画の早い段階で法規に関する確認が推奨されています。
結論
新技術や新商品の開発では、法規が技術と同様に重要な位置を占めます。法的リスクを避け、安心して事業化するためには、計画の初期段階で関連法規を調査し、遵守することで無駄なリスクを回避できるとされています。
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