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■引用原文(日本語訳)
このことをはっきりと知って、つとめ励みを能く知る人々は、つとめ励みを喜び、聖者たちの境地を楽しむ。
(『ダンマパダ』第2章「はげみ」第22偈)
■逐語訳
- この真理(精進が不死をもたらすこと)を明確に理解した者たちは、
- 精進をよく知り、精進を愛するようになる。
- 彼らは進んで努力し、
- 聖者(アーリヤ)の境地(悟り、安らぎ)を味わい楽しむ。
■用語解説
- このこと(イダン・ヒ):前偈(第21偈)の教え「精進は不死、怠惰は死」の真理。
- つとめ励み(アッパマーダ):仏教的な積極的注意、不断の努力、意識的な生き方。
- 能く知る(パンダー):智慧ある者、理解の深い人。
- 聖者たちの境地(アーリヤーナン・パダン):悟りを得た人々(聖者)が住む精神の安らぎ、涅槃。
■全体の現代語訳(まとめ)
前の偈(21)で説かれた「精進は命、怠惰は死」という真理を正しく理解した人々は、その意義を深く知ることによって、精進すること自体を喜び、励むことを楽しみとする。
その結果、彼らは聖なる悟りの境地――すなわち、静謐で力強い心の安らぎに至るのである。
■解釈と現代的意義
この偈は、精進そのものを「喜び」として生きる境地の価値を説いています。
目標の達成や報酬ではなく、「努力している状態」そのものを愛せる人こそ、真の意味で満たされた人間です。
現代では「成果主義」や「効率」が重視されがちですが、この教えは“結果”ではなく“プロセス”を尊ぶ仏教的価値観を示しています。努力そのものが心の糧であり、生の深さなのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
働き方の意識 | 苦役ではなく「働くことそのものを喜べる」人材は、長期的に成果を上げ、組織の中心になりやすい。 |
モチベーション | 精進を「義務」と感じるのではなく、「価値ある選択」と感じられる人は、自走しやすく燃え尽きにくい。 |
人材育成 | 成長過程を楽しめる部下は、結果を出す前から既に“成功している”といえる。 |
経営哲学 | 精進そのものを文化とし、楽しめる企業体質は、持続可能なイノベーションを生み出せる。 |
■心得まとめ
「努力を喜ぶ人に、心の王国が開かれる」
やらされる努力ではなく、自ら喜んで行う精進――そこに、人生の質を根底から変える力があります。
成功や評価を待つのではなく、「今、努力できていること」に感謝し喜ぶとき、人はすでに聖者の道を歩んでいるのです。
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