目次
賢者に学び、愚者に我が身を映す
孔子は、人の成長とは、他人との関わりの中でこそ促されると説いた。
もし賢い人を見たら、「自分もあのようになりたい」と心から学ぼうとする気持ちを持つべきである。
逆に、よくない人を見た時には、「自分にも同じ欠点はないか」と内省し、自らの行動や心を正していく。
他人の姿は、批判や羨望の対象ではなく、常に「自分を映す鏡」として活用するもの。
この言葉には、自己修養の姿勢と、人間関係を通じて成長する知恵が込められている。
良き人を見れば手本とし、そうでない人を見れば、我が身を直す機会とせよ。
原文
子曰、見賢思齊焉、見不賢而內自省也。
書き下し文
子(し)曰(いわ)く、賢(けん)を見(み)ては斉(ひと)しからんことを思(おも)い、
不賢(ふけん)を見ては、内(うち)に自(みずか)ら省(かえり)みるなり。
現代語訳(逐語・一文ずつ)
- 「賢を見ては斉しからんことを思い」
→ 優れた人(賢者)を見たときには、自分もそのようになりたいと願い学ぼうとする。 - 「不賢を見ては、内に自ら省みるなり」
→ 愚かな人(至らない人)を見たときには、「自分にも同じような点がないか」と内省する。
用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
賢(けん) | 徳や知恵に優れた人。学ぶべき模範となる人物。 |
齊(ひと)し | 同じになる、等しくなる、並ぶ。ここでは「そのようになろうと努める」の意。 |
不賢(ふけん) | 賢くない人。欠点・問題のある人物。 |
省みる(かえりみる) | 反省する、自分の言動や心を振り返ること。 |
内に自ら省みる | 外を批判する前に、まず自分の中に同じ性質がないかを点検する。 |
全体の現代語訳(まとめ)
孔子はこう語った:
「優れた人を見たら、自分もその人のようになろうと努力し、
未熟な人を見たら、自分の中に同じような欠点がないかどうかを省みるべきである」
解釈と現代的意義
この章句は、「自己成長のための学びの姿勢」を説く孔子の基本的な教えです。
- 人は無意識に他人を見て「羨む」か「蔑む」かしてしまいがちですが、
孔子はそれをすべて**“自己を高める材料”として捉えよ**と教えています。 - 賢者を見て卑屈になるのではなく、「学びと目標」にし、
愚者を見て見下すのではなく、「自省と反省」に変えるのが、君子の姿勢。
ビジネスにおける解釈と適用
「優秀な人を羨まず、学びに変える」
- 才能や成果を出している同僚・上司・競合他社を「妬む」のではなく、
「どこが違うのか」「何を学べるのか」という視点を持つことが成長につながる。
「他人の失敗から、自分を省みる」
- 他人の失敗・問題行動を見たとき、「自分はどうか」と考えることが、
失敗の本質的理解と再発防止、人格の成熟につながる。
「批判より内省の文化を」
- 組織文化としても、「人を責める」より「まず自分を振り返る」姿勢を育てることで、
責任の押しつけ合いでなく、信頼と成長を促す職場環境が実現する。
まとめ
「他者は鏡、自分を映す──見て学び、見て省みる姿勢が、成長を生む」
この章句は、**「他人の優劣を見る目」ではなく、「それをどう自分に生かすか」という“学びの在り方”**を孔子が教えてくれるものです。
優れた人から学び、未熟な人からも学ぶ。
すべての人間関係と出来事を“自己修養の素材”とする君子の姿勢は、現代のあらゆる場面において有効であり続けます。
コメント