孟子は、人の行動や志の持ち方について次のように説いている。
やめてはならないときにやめる者は、何に対しても簡単に手を引く。
厚く(大切に)すべきことを薄く扱う者は、すべてを軽んじる傾向がある。
そして、むやみに勢いよく進む者は、退くときもあっという間である。
「孟子曰く、已むべからざるに於いて已むる者は、已めざる所無し。厚くする所の者に於いて薄くするものは、薄くせざる所無し。其の進むこと鋭き者は、其の退くこと速やかなり」
つまり、一見、熱心に見えるような者でも、判断や信念に根ざしていなければ、それは持続せず、やがて急に引いてしまう。
孟子がここで教えているのは、「行動の勢い」よりも、「志や信念の根の深さ」が重要だということである。軽々しく熱中する者ほど、あっさり冷める。反対に、本当に価値ある行動や思索には、忍耐と熟慮が伴っているべきだと説いている。
※注:
- 「已む」…やめる、引く。
- 「厚くする」…価値を置く、大切にする。
- 「鋭く進む」…勢いよく進む。思慮に欠けた突進のこと。
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