目次
📜引用原文(日本語訳)
第七章 真人(しんにん) 九三偈
「その人の汚れは消え失せ、食物をむさぼらず、その人の解脱の境地は空にして無相であるならば、かれの足跡は知り難い。空飛ぶ鳥の迹の知りがたいように。」
――『ダンマパダ』第七章 第93偈
🔍逐語訳と語句解説
語句 | 解説 |
---|---|
汚れは消え失せ | 煩悩・欲望・怒り・無知など、心の汚れが完全に消えた状態。 |
食物をむさぼらず | 食に対する節制を持ち、必要以上を求めない慎み深い態度。 |
解脱の境地は空にして無相 | あらゆる執着・分別を超えた、「空(シューニャ)」と「無相(アニミッタ)」の精神的完成の状態。 |
足跡は知り難い | 外的な痕跡や名声を残さず、誰にも測ることのできない静かな生き様。 |
🧠全体の現代語訳(まとめ)
その人の心がもはや煩悩に汚されておらず、必要以上に求めることもなく、しかもその人の到達した境地が「空(から)」であり、固定的な「形」がないものであれば、その人が辿った道(=生き様)は、もはや他者にはたどれない。
それは、空を飛ぶ鳥が痕跡を残さぬようなものである。
🌐解釈と現代的意義
この偈文は、**「欲望の克服」と「自己を消して生きる」**という理想を描いています。
現代では、成功や承認を求めることが当然とされますが、この偈はあえて逆を行きます。
欲を抑え、栄光も名も追わずに、ただ清く、静かに生きる人――その生き様は測りがたく、誰にも真似できない崇高さを帯びます。
これは「自分を主張しないが、誰よりも強く美しい存在」への道を示しているのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務的応用 |
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過剰な成果欲の克服 | 何かを得ようとする焦りから解放されると、自然体の中で最高のパフォーマンスが発揮される。 |
控えめなリーダーシップ | 自己主張よりも、行動で導くタイプのリーダーが、深い信頼を築く。 |
名声を求めない貢献 | 名を残すより、影響を残す。「誰がやったか」よりも「何が成されたか」に集中する姿勢。 |
節度と内面の強さ | 消費や刺激に流されず、本当に必要なものを知っている人は、判断力と集中力において他より優れる。 |
🧘♀️心得まとめ
「欲せず、残さず、ただ澄んで行け――鳥が空を翔けるように」
成熟とは、欲を満たすことではなく、欲を手放すことによって実現されます。
『ダンマパダ』第93偈は、静かで純粋な在り方を貫く人こそが、本当に遠くまで行けることを示します。
ビジネスにおいても、声高に自己を主張するより、行動と人格で示す生き方が、もっとも深い敬意を集めるのです。
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