■ 引用原文(日本語訳)
ふるい立ち、思いつつましくこころは清く、気をつけて行動し、みずから制し、法にしたがって生き、つとめはげむ人は、名声が高まる。
――『ダンマパダ』第四章「はげみ」第6節
■ 逐語訳(一文ずつ現代語訳)
- 奮い立ち、つねに慎みをもって考え、心を清め、
意欲をもって行動を開始し、謙虚で慎重な思考を保ち、心を浄化していく。 - 注意深く行動し、自己を制御し、正しい法(ダルマ)に従って生きる人は、
軽率な行為を避け、自らの欲望をコントロールし、真理に基づいた生き方を実践する者は、 - 努力を積み重ねることで、その名声が高まっていく。
目立とうとせずとも、自然と世に認められ、敬意を集めるようになる。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
ふるい立つ(ウッターナ) | 精神を奮い起こし、積極的に正しい行動を選び取ること。 |
思いつつましく(サマチッタ) | 慎み深く思考する。傲慢にならず、自己を内省する姿勢。 |
こころは清く(ヴィシュッダ・チッタ) | 貪り・怒り・無知を離れた清浄な心の状態。 |
法にしたがって生きる(ダンマチャリ) | 真理・倫理・普遍的正しさに則って日常を送ること。 |
名声(ヤーシャス) | 他者からの自然な尊敬と信頼。評判ではなく人格に根差した評価。 |
■ 全体の現代語訳(まとめ)
奮い立って行動し、慎み深く心を清らかに保ち、自律と注意をもって真理に従う者は、自然と周囲からの信頼と尊敬を得るようになる。
それは外面的な「評価」を狙うのではなく、内面的な誠実さと努力によって生まれる「静かな名声」である。
■ 解釈と現代的意義
この節は「徳を積む者こそが、真に評価される存在になる」ことを教えています。
世俗的な成功や一時の話題ではなく、慎みと清らかさ、法(道理)に従った継続的な努力が、結果としてその人の価値を静かに際立たせます。
それは「目立たずして光る」、内側からにじみ出る名声――本質的な評価のあり方です。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
誠実な仕事 | 派手な成果を追わずとも、日々の積み重ねと丁寧さが信頼を築き、結果として評価される。 |
人間関係の築き方 | 謙虚で思慮深い言動と、誠実なふるまいが、長期的な人望となる。 |
自己ブランディング | 作られたイメージではなく、「誰が見ていなくても正しいことをする」姿勢が、最終的に信頼と評価を生む。 |
リーダーシップ | 押しつけずとも、自らの姿勢で周囲を導く人こそ、本当に名を上げる存在となる。 |
■ 心得まとめ
「努力は声高に語らずとも、静かに人を動かす力となる。」
世間に評価されようとする前に、自らを律し、心を清め、道を歩むこと。
そのような生き方を続ける人は、たとえ声を上げなくても、周囲が自然とその姿勢に敬意を抱き、信頼を寄せてくる。
名声とは、求めるものではなく、にじみ出るもの――それが仏教の教える「真の名誉」です。
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