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名を求めず、日々の徳を静かに積む

私的な恩を売るよりも、公正な意見や正義に力を添えるほうがよい。
新しい交友を求めるよりも、古くからの信頼ある関係を大切にすべきである。
名声を立てることに熱中するよりは、人知れず善を積み上げる方が深く尊い。
派手な行動で目立つより、ごく当たり前の行いを丁寧に実践することこそ、真に価値がある。

見せる善より、見えない徳。
騒がしく立つより、静かに根を張る。
これこそが、長く人に信頼され、人生を豊かにする生き方である。


原文(ふりがな付き)

私恩(しおん)を市(う)るは、公議(こうぎ)を扶(たす)くるに如(し)かず。新知(しんち)を結(むす)ぶは、旧好(きゅうこう)を敦(あつ)くするに如かず。栄名(えいめい)を立(た)つるは、陰徳(いんとく)を種(う)うるに如かず。奇節(きせつ)を尚(たっと)ぶは、庸行(ようこう)を謹(つつし)むに如かず。


注釈

  • 私恩を市る(しおんをうる):自分の恩義を取引のように見せびらかすこと。人間関係を利用する態度。
  • 公議を扶くる(こうぎをたすくる):社会の正義・公共の意見を支える行動。個人よりも公を優先する心構え。
  • 旧好を敦くする(きゅうこうをあつくする):長く続く友情を温め、信頼を深めていくこと。
  • 栄名(えいめい):人目を引く派手な評判や名声。評価されることを第一に考える姿勢。
  • 陰徳(いんとく):人に知られずに積む善行。評価や報酬を求めない道徳的行い。
  • 奇節(きせつ):突飛で目立つ行動や特別な振る舞い。
  • 庸行(ようこう):日常的な当たり前の行動。平凡であっても着実な実践。

パーマリンク(英語スラッグ)

  • quiet-virtue-over-fame(名声より静かな徳)
  • honor-the-ordinary(平凡を尊ぶ)
  • support-justice-not-ego(自己より公を支える)

この条文は、現代においてもビジネスや人間関係で見失いがちな「自己顕示」と「地道な実践」の差異を明確に教えてくれます。
評価されたい、注目されたいという心を抑え、人知れずやるべきことを積む生き方が、やがて真の信頼と尊敬につながるのです。

目次

1. 原文

市私恩、不如扶公議。
結新知、不如敦舊好。
立榮名、不如種隱德。
尙奇節、不如謹庸行。


2. 書き下し文

私恩を市るは、公議を扶くるに如かず。
新知を結ぶは、旧好を敦くするに如かず。
栄名を立つるは、陰徳を種うるに如かず。
奇節を尚ぶは、庸行を謹むに如かず。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ)

  • 私恩を市るは、公議を扶くるに如かず。
     → 個人的な恩義を売るよりも、公正な議論を支える方が優れている。
  • 新知を結ぶは、旧好を敦くするに如かず。
     → 新しい関係を築くよりも、古くからの友情を大切にする方が価値がある。
  • 栄名を立つるは、陰徳を種うるに如かず。
     → 名声を立てることよりも、人に知られぬ善行を積む方が高く尊い。
  • 奇節を尚ぶは、庸行を謹むに如かず。
     → 風変わりな節義を誇るよりも、平凡な行いを丁寧に行う方が大切である。

4. 用語解説

  • 市(し)る:売買する、取引のように恩を与えて恩返しを期待する態度。
  • 私恩(しおん):私的な恩義、個人の情けや利益。
  • 公議(こうぎ):公正な議論、公益の立場からの意見や判断。
  • 敦(あつ)くする:厚くする、深くする。ここでは「親しみを深める」意。
  • 旧好(きゅうこう):古い友人とのよしみ・友情。
  • 栄名(えいめい):世間に知られる立派な評判・名声。
  • 陰徳(いんとく):人に知られずに行う善行。
  • 奇節(きせつ):風変わりな節義や志、目立つ行動。
  • 庸行(ようこう):平凡な日常の行い。
  • 謹む(つつしむ):慎重に丁寧に行うこと。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

個人的な恩を売るより、公平で正しい意見を支えることの方が価値がある。
新しい人間関係を求めるより、昔からの友人との関係を深めることが大切である。
名声を追い求めるより、人知れず善行を積むことの方が高尚である。
目立つ行動や奇抜な節義を誇るより、日常の平凡な行動を丁寧に行う方が尊い。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「本質を見よ、派手さに惑わされるな」**というメッセージに貫かれています。

  • 人はつい目立つ行動や評価されることを求めがちだが、本当に価値あるものは地味で一貫した行いに宿る。
  • 公益・友情・無私の徳・日常の実践──どれも**“根の深い美徳”**を重視している点が特徴です。

これは現代における**「中庸」「誠実」「継続」**の価値を説く金言ともいえる内容です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「私的な利益誘導より、正しい議論を」

利害関係を前提とした“恩を売る”関係は、長続きせず信頼も薄い。
社内外を問わず、フェアでオープンな議論の支援者であることが、信頼と影響力の源になる。

● 「人脈は“新規開拓”より“旧縁深化”を」

新しいつながりに目を向けがちな時代だからこそ、過去に築いた信頼ある関係を深めることが、長期的な成果につながる。

● 「目立つよりも、陰で支える徳を」

表に出て評価される行為より、他人に知られぬ努力や支援(=陰徳)を重ねる方が、本当の人間力と評価を生む。

● 「奇抜な戦略より、日々の丁寧な行動」

尖ったアイディアや一発勝負よりも、毎日の丁寧な報連相や資料作成、会議の準備など、地道な行動が組織を支える。


8. ビジネス用の心得タイトル

「目立つより誠、広げるより深める──地に根ざした行いが信頼を築く」


この章句は、現代ビジネスの課題である**“派手さ重視・短期成果志向”に対して、“誠実な基礎・信頼の積み上げ”**という対抗軸を与えてくれます。

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