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即答力は信頼の証 ― 段取り上手は出世の才


一、原文(抄出)

一とせ綱茂公九郎右衛門を召出され、
「妹ども川上遊山に参り候に付て、其方供致す由。女中大勢の事に候へば、乱に之れ無き仕組仕るべき事、何と仕組み候や」
とお尋ね成され候。九郎右衛門即座にて、右の仕組一々少しも滞無く委細申上げ候に付て、
「もつともの仕組なり。入念候へ」と御意成され候。
その後、
「九郎右衛門と云ふ者は珍しき者なり。重宝なり」とことの外御褒美の由。


二、書き下し文(要約)

あるとき、第三代藩主・綱茂公が石井九郎右衛門を呼び寄せ、妹たちの川上村への行楽に供をするよう命じた。女中が大勢であるため、混乱がないよう段取りを尋ねられたところ、九郎右衛門は即座に詳しく一切の手順を述べた。

これに綱茂公は非常に感心し、「入念に頼む」と念を押した上で、後日「あれは実に重宝な男だ」と大いに褒めたという。


三、用語解説

用語解説
川上遊山川上村への行楽(お出かけ)。
九郎右衛門石井九郎右衛門。段取りに長けた家臣。
御意成され候ご賛同・お褒めの言葉を賜ること。
取敢へず空に申上げ候事即座に口頭で、詳細に説明すること。

四、全体現代語訳(まとめ)

ある年、鍋島綱茂公が家臣・石井九郎右衛門を呼び寄せ、「妹たちが川上村へ出かけるので、女中が多いこともあり、そつなく仕切ってほしい。どう手配しているのか?」と尋ねた。
すると九郎右衛門は、少しも迷うことなく、すらすらと段取りを説明した。
綱茂公はその見事な対応に感心し、「実に用意が良い、念入りに頼む」と褒めた上で、後に「九郎右衛門のような者は、近ごろ珍しい。まことに重宝な家臣だ」とまで称賛したという。


五、解釈と現代的意義

この逸話が示すのは、**「即答できる者は信用される」**という原則です。

綿密な準備とシミュレーションをしている人は、予想される問いに対して即時に筋道立てて答えることができる。これは単なる記憶力ではなく、全体構造を把握して行動に移す力=プロジェクトマネジメント能力です。

現代においても、会議や上長からのヒアリングに対し、
「ええと……少し確認してみます」ばかりでは、信頼を勝ち取ることは難しい。
**的確な情報を整理し、状況に応じた判断・説明が即座にできる人材こそ「重宝される存在」**なのです。


六、ビジネス応用(チェックリスト)

項目応用例・工夫
✅ 段取りの可視化作業工程を一覧化し、全体像を把握しておく
✅ 想定問答を準備上長・クライアントからの質問を想定しておく
✅ 状況報告は「即答型」状況・準備・次の手の順で簡潔に報告
✅ チーム内共有担当者だけでなく周囲も状況を把握できる体制を整える
✅ 「段取り力」も一芸と捉える派手でなくとも、組織に不可欠な能力として自負する

七、心得まとめ

「即座に段取りを語れる者、組織を治む」

光る発言よりも、光る備えを。
あらゆる場面において、問われてから考えるのでは遅すぎる。
あらかじめ構想し、整理し、行動計画として持っている者こそ「真の使える者」である。

見えぬところで力を備えよ。即答できる人間こそ、真に頼られる。


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