目次
📜引用原文(日本語訳)
第七十九偈
いかなる熱い煩悩ももはや存在せず、悪の根の滅びてしまった修行僧は、こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』第二章 第七十九偈
🔍逐語訳と用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
熱い煩悩(サンヴェーガ) | 燃え上がるような情熱的欲望、怒り、嫉妬、羨望など、心を乱す激しい感情のこと。 |
悪の根(akusala-mūla) | 三毒——貪(欲望)、瞋(怒り)、痴(無知)。苦しみの根源とされる。 |
こなたの岸 | 煩悩に満ちた現世の生死輪廻の世界。 |
蛇の脱皮 | 古い自我・煩悩・執着を捨てて新たな境地に入る象徴。成熟と変容の完成を表す。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
もはや激しい煩悩に心を焼かれることなく、
苦しみの根である貪り・怒り・無知を完全に断ち切った修行僧は、
この迷いと苦しみの世界を超えて、解脱の彼岸へと渡り終える。
その姿は、
脱皮し終えた蛇が古い皮を静かに捨てるように、
静かで、穏やかで、戻ることのない完成された境地である。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「感情に支配される状態」から「智慧によって感情を観照し、越える生き方」への変化を示しています。
煩悩は生きるエネルギーのようでいて、実はその火に焼かれているのは自分自身です。
「怒らない」「欲しがらない」のではなく、怒りや欲望が自然に消えていく地点に達した状態が説かれています。
これは単なる禁欲ではなく、内なる熱を静けさへと昇華させる技法と境地の象徴でもあります。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用 |
---|---|
感情のマネジメント | 怒りや焦りに任せて行動するのではなく、静かに内省して対処する力が、リーダーの品格を育てる。 |
ストレスの超越 | 煩悩(業績欲、承認欲、支配欲)に振り回されるのではなく、その構造を理解して、手放す習慣を持つことでブレない自分を築ける。 |
本質的モチベーション | 外的刺激ではなく、内的安定と明晰さによって駆動される仕事は、長期的に成果と満足を両立させる。 |
チーム内の温度調整 | 熱くなりすぎるメンバーに対して、冷静に受け止め、空気を中和する存在は、信頼される支柱となる。 |
✅心得まとめ
「心の炎が鎮まったとき、真の静寂が訪れる」
煩悩は熱である。
その熱に煽られて走るうちは、苦しみの炎は絶えず燃え続ける。
だが、熱の正体を知り、燃料を絶つとき、
心は静かに、深く澄みわたる。
もはや争わず、
奪おうとせず、
認められようともしない――
ただ、自然にそこに在る。
それが「脱皮した後の修行僧」の境地である。
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