■引用原文（日本語訳）
「〔過度に〕苦く、酸っぱく、塩辛く、〔口などを〕焼く、刺激性で、油気がなく、ひりひりし、苦痛と憂いと病気をもたらす食物は、激質的な者に好まれる。」
――第17章 第9節
「新鮮でなく、味を失い、悪臭あり、前日調理された、また食べ残しの、不浄の食物は、暗質的な者に好まれる。」
――第17章 第10節
■逐語訳
第9節：激質の食物
非常に苦く（ティクタ）、酸っぱく（アムラ）、塩辛く（ラヴァナ）、
焼けるように熱く（アティ・ウシュナ）、
刺激が強く（ティークシャナ）、油気がなく（ルクシャ）、
ひりひりして（ヴィダーイ）、
その結果、苦痛（ドゥフカ）、憂い（ショーカ）、病（アーマヤ）をもたらす――
このような食物は、激質（ラジャス）を持つ者に好まれる。
第10節：暗質の食物
新鮮でない（ヤータヤーマム）、味を失った（ガタ・ラスム）、悪臭のある（プーティ）、
前日に調理された（パリューシャイット）、食べ残しの（ウッチヒシュタム）、
不浄な（アメーダヤム）食物は、暗質（タマス）の者に好まれる。
■用語解説
- 激質（ラジャス）：情熱・衝動・欲望・苛立ちの性質。短期的な刺激を求める傾向が強い。
- 暗質（タマス）：無知・怠惰・混乱・惰性の性質。停滞し、不浄・重さを好む傾向。
- 刺激性・熱性の食：激辛・高温・香辛料過多など、感覚を過剰に興奮させる食物。
- 新鮮でない食物：冷えたままのもの、調理から長時間経過したもの、味や香りが劣化したもの。
- 不浄の食物：衛生状態が悪く、清潔さや栄養より「習慣的な惰性」で摂取される食。
■全体の現代語訳（まとめ）
クリシュナはここで、食物が人の性質と密接に関係していることを強調している。
情熱的で衝動的な人（激質）は、過度に刺激的な食物を好み、それが結果として心身の不調を招く。
また、無気力で混乱した人（暗質）は、鮮度や清浄さを欠いた、惰性の食物を選ぶ傾向がある。
人の精神性は、口にするものに如実に表れるという哲学的視点が示されている。
■解釈と現代的意義
これらの節は、単に食の嗜好を説いているのではありません。
どのような食を選ぶかは、その人の性格・習慣・思考パターンを映し出す鏡であるという教えです。
刺激を求めすぎる人は落ち着きを失い、惰性で劣化した食を摂る人は心の清明さを欠いてゆく――そのような悪循環を断ち切るために、「純質な食」を選ぶことが、心身と魂の調和への第一歩であるとされます。
■ビジネスにおける解釈と適用
| 観点 | 適用例 |
|---|---|
| 集中力と食習慣 | 刺激物やスナック依存は短期的集中を誘うが、長期的にはイライラや体調不良を引き起こす。激質的食習慣は判断力を鈍らせる。 |
| 感情管理と暗質性 | 惰性で不健康な食事（冷えたファストフードや残り物）を繰り返す人は、感情が不安定になりやすく、創造性や前向きさが失われやすい。 |
| チーム全体の健康意識 | 食事への無関心は生産性の低下を招く。「質の高い食事は質の高い仕事を生む」という考えを文化として浸透させることが重要。 |
| ライフスタイルの設計 | 自分が何を「快」とするかを問い直すことで、自己制御力・自己尊重感が育つ。食の改善は自己管理の起点となる。 |
■心得まとめ
「口にするものは、心を形づくる」
食べ物は栄養以上に、「気質（グナ）」を強化・変化させる力を持つ。
激質は興奮と不調を、暗質は停滞と無気力をもたらす。
自分を変えたければ、まず食から変えよ――選ぶ食が、未来のあなたをつくる。
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