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ひたすら善を為すことが聖人の道

孟子は、早朝に鶏が鳴いて起きた後、ひたすら善を為すことに努める者は、聖人である舜の仲間であり、善を追求する者だと説いた。一方、同じように鶏が鳴いて起きた後、ただ自分の利を追い求める行動をする者は、大盗賊の跖の仲間であり、自己中心的な利己的行動を取る者だと言った。舜と跖の違いを知りたいなら、それは単純に「利」を追い求めるか、「善」を追い求めるかの違いであると孟子は教えている。

「孟子曰(もうし)く、雞鳴きて起き、ひたすら善を為す者は、舜の徒なり。雞鳴きて起き、ひたすら利を為す者は、跖の徒なり。舜と跖との分を知ろうと欲するならば、他に何もない、ただ「利」と「善」の間の違いに過ぎない」

「鶏が鳴いて起き、ひたすら善を為す者は舜の仲間であり、鶏が鳴いて起き、ひたすら自分の利益だけを追求する者は、盗跖の仲間である。舜と盗跖の違いを知りたいのであれば、それはただ「利」を追い求めるか、「善」を追い求めるかの違いに過ぎない」

孟子は、善を為すことが、ただの生活の営みを超えて、徳を積むことにつながり、結果的にその人を聖人へと導くと教えている。一方、自己利益を追求し続けることが、結局は道を外れた行動に繋がるのだと強調している。

※注:

「孶孶」…ひたすら努めて、勤勉な様子を示す。
「跖」…盗跖(とうせき)。古代中国の大盗賊で、自己利益のみに従った人物。
「分」…違い、差異。

目次

『孟子』離婁章句上より

1. 原文

孟子曰、雞鳴而起、爲善者、舜之徒也。雞鳴而起、爲利者、跖之徒也。
欲知舜與跖之分、無他、利與善之間也。


2. 書き下し文

孟子曰(いわ)く、鶏鳴(けいめい)して起き、善を為す者は舜(しゅん)の徒(ともがら)なり。
鶏鳴して起き、利を為す者は跖(せき)の徒なり。
舜と跖との分を知らんと欲せば、他に無し。利と善との間(かん)なり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「鶏が鳴いて起きて、善を行う者は、舜に属する者である。」
     → 早朝に目覚めて善行に励む者は、聖人・舜の仲間である。
  • 「鶏が鳴いて起きて、利益を求める者は、跖に属する者である。」
     → 早朝に起きて利益を求める者は、盗賊・跖の仲間である。
  • 「舜と跖の違いを知りたいのなら、それは“善と利”の違いにある。」
     → この二人の根本的な差は、「善」を目指すか「利」を目指すか、それだけなのだ。

4. 用語解説

  • 雞鳴(けいめい):夜明け前、鶏が鳴く時刻。修養・勤勉・早起きを象徴する。
  • 舜(しゅん):古代中国の理想的聖王。道徳と徳治の象徴。
  • 跖(せき):盗跖(とうせき)という伝説的な大盗賊。孟子において「悪の象徴」として用いられる。
  • 徒(ともがら):仲間、同類、門下生。
  • 分(ぶん):区別・分かれ目・違い。
  • 利(り):自己の利益・損得勘定。孟子においては多くの場合“私利私欲”を意味する。
  • 善(ぜん):道徳的に正しいこと、他人への配慮や社会的な正義を含む。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

孟子は言った:
夜明けに起きて、善を行う者は、舜のような人物である。
同じく早起きをしても、自分の利益のために動く者は、盗跖のような人物である。
舜と跖の違いを知りたければ、それは「善を求めるか」「利を求めるか」の一点に尽きる。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「努力そのものではなく、**動機(何のために行うか)**こそが人間の価値を決める」という思想を鋭く示しています。

  • 同じ努力でも、目指すものが違えば全く異なる人格になる
     例えば、同じ早起き・勉強・行動であっても、「公共心・正義・他者への配慮」を持っているか、「自分だけの利益・地位・名誉」だけを求めているかで、その人の価値は天と地ほど違う。
  • 人間の“格”は、行動ではなく価値基準に宿る
     聖人・舜も、盗賊・跖も、同じように勤勉だったかもしれない。しかし彼らの目的と志は正反対であり、それが彼らの人格と影響力を決定づけた。

孟子は、「人は志によってこそ分かれる」という、人間観の本質を説いています。


7. ビジネスにおける解釈と適用

✅ 「努力の先に“何を目指すか”が問われる」

ただ成果を出すだけの人と、組織や社会の価値に貢献する人は違う。真のリーダーは、“利”ではなく“善”を目的に据える。

✅ 「早起きだけでは舜になれない」

努力・勤勉・成長といった行動習慣は、重要だが不十分。その努力が誰のためか・何のためかに自覚があることが人格を形づくる。

✅ 「“善”が利益を超える時、組織は信頼される」

利得中心の判断は一時的成果を生むが、信頼や持続性を損なう。善に根ざした行動は、長期的なブランドと社員の誇りを育む。


8. ビジネス用の心得タイトル

「努力の先に、利か善か──“志”が人と組織の格を決める」


この章句は、現代社会においても「志」「動機の純度」を見直すための重要なメッセージです。

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