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■引用原文(日本語訳)
「アルジュナよ、なすべきであると考えて、定められた行為を、執着と結果とを捨てて行う場合、それは純質的な捨離であると考えられる。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第9節)
■逐語訳
アルジュナよ、
「これは私のすべきことである」と理解しながら、
定められた行為を、執着(アースティ)と結果(パラ)を捨てて実行するならば、
それはサットヴァ(純質)に基づく捨離であると認められる。
■用語解説
- 定められた行為(ニヤタ・カルマ):立場・役割・状況に応じてなすべきとされる義務的行為。
- 執着(アースティ):感情的な所有意識や、自我の投影。「私がやった」「私の手柄」といった心理。
- 結果(パラ):行為によって得られる成果・報酬・名声など。
- 純質的(サットヴァ):純粋・調和・明晰・知性に満ちた性質。心が静かで、意図が澄んでいる状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナよ、もし人が「これは自分の義務である」と理解して、結果や自我への執着を手放しながらそれを行うならば、それは心が澄み切ったサットヴァ的な捨離である。
それは、何かを逃れるためでも、何かを得るためでもなく、「為すべきを為す」という精神に基づく、最も純粋な手放しの形である。
■解釈と現代的意義
この節は、「真の捨離」とは何かを明確に示しています。
捨てるのは行為そのものではなく、「執着」と「結果への期待」である。そしてその上で、義務・責任・使命を淡々と果たすことが、最も高い境地であるというのです。
これは逃避でも忍耐でもなく、知性と内的自由に裏打ちされた行動の美学です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
プロフェッショナリズム | 結果に一喜一憂せず、「自分の役割を誠実に果たす」姿勢こそが、信頼と長期的成果を生む。 |
リーダーシップ | 指示や管理ではなく、自らの義務を自覚し、報酬を目的とせずに実行するリーダーは、自然と人を動かす力を持つ。 |
メンタル安定性 | 結果や評価に左右されず、「なすべきことをなす」という軸を持てば、ストレスや不安が軽減される。 |
■心得まとめ
「なすべきを、なす。ただし心は自由であれ」
純なる捨離とは、行為をやめることではなく、心の執着を脱ぎ去りながら責任を果たすこと。
それは逃げることでも、頑張りすぎることでもない。「今、果たすべき務め」を静かに果たす人の内に、真の自由と幸福は宿る。
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