貸倒引当金繰入は、貸倒引当金を計上するために必要な経費を指します。貸倒引当金は、売掛金や貸付金などの債権が貸倒れになる可能性に備えて計上する引当金で、将来の貸倒損失に対応するために必要です。
貸倒引当金繰入は、損益計算書上の費用として計上され、貸倒引当金の増加分として処理されます。
貸倒引当金繰入の目的
- 貸倒れリスクへの備え
- 売掛金や貸付金が回収不能となった場合に備えて、事前に準備します。
- 経営リスクの平準化
- 貸倒損失が発生しても、事前に計上した引当金で対応できるため、損益への影響を平準化します。
- 財務の健全性向上
- バランスシート上で適切な引当金を計上することで、財務の信頼性を高めます。
貸倒引当金繰入の会計処理
1. 貸倒引当金の計上
期末に貸倒引当金を計上する場合、繰入額を損益計算書の「貸倒引当金繰入」勘定として費用計上し、貸借対照表の「貸倒引当金」を負債または資産の控除項目として記録します。
例:期末に貸倒引当金として50,000円を計上
借方:貸倒引当金繰入 50,000円
貸方:貸倒引当金 50,000円
2. 実際に貸倒れが発生した場合
貸倒引当金を使用して貸倒れ処理を行います。
例:売掛金30,000円が貸倒れた場合
借方:貸倒引当金 30,000円
貸方:売掛金 30,000円
3. 引当金不足分の処理
貸倒引当金では対応できない分は、直接「貸倒損失」として計上します。
例:貸倒れが引当金額を超過し、20,000円が不足
借方:貸倒引当金 50,000円
借方:貸倒損失 20,000円
貸方:売掛金 70,000円
貸倒引当金繰入の計算方法
貸倒引当金繰入額の計算は、一般的に以下の方法で行われます。
1. 一定割合法
- 過去の実績や取引先の信用状況に基づき、売掛金や貸付金の一定割合を引当金として計上。
- 例:売掛金の2%を貸倒引当金として計上。
2. 信用リスク分類法
- 債権を信用リスクごとに分類し、それぞれのリスクに応じた引当金を設定。
- 例:
- 正常債権:1%
- 要注意債権:10%
- 破産更生債権:50%
計算例
- 売掛金総額:1,000,000円
- 正常債権:800,000円 × 1% = 8,000円
- 要注意債権:150,000円 × 10% = 15,000円
- 破産更生債権:50,000円 × 50% = 25,000円
貸倒引当金合計:48,000円
税務上の貸倒引当金繰入
税務上、貸倒引当金の計上は法人税法に基づき、一定の算出方法で行います。
- 法定繰入率
- 過去の貸倒実績に基づいて税務署が認める繰入率を適用。
- 損金算入の限度額
- 貸倒引当金として損金に認められる金額には制限があります。
貸倒引当金繰入の注意点
- 実態に基づいた計上
- 貸倒引当金は、取引先の信用リスクや過去の実績に基づいて合理的に設定する必要があります。
- 税務との整合性
- 税務上の貸倒引当金計上限度額を超えないよう注意します。
- 定期的な見直し
- 毎期末に債権の状態を再評価し、引当金の見直しを行います。
- 監査対応
- 貸倒引当金の計上根拠や計算方法を監査時に説明できるように記録を整備します。
貸倒引当金繰入の例と仕訳まとめ
取引内容 | 仕訳例 |
---|---|
貸倒引当金繰入の計上(期末処理) | 借:貸倒引当金繰入 50,000円 貸:貸倒引当金 50,000円 |
貸倒引当金を使用した貸倒処理 | 借:貸倒引当金 30,000円 貸:売掛金 30,000円 |
貸倒引当金不足分の貸倒損失計上 | 借:貸倒引当金 50,000円 借:貸倒損失 20,000円 貸:売掛金 70,000円 |
まとめ
貸倒引当金繰入は、貸倒れのリスクに備えて事前に費用として計上する重要な会計処理です。適切な計算方法や合理的な基準を基に計上することで、企業の財務状況の信頼性を高めることができます。また、税務上の要件にも注意し、法令に則った適切な管理を行うことが重要です。
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