流通業と製造業の収益性の違い
流通業では、期間ごとの収益性を計算する際に、既存の算式をそのまま利用すれば問題ない。商品は仕入れればよいため、数量の制約については、仕入先の能力がある限り、基本的には考慮する必要がない。
ただし、例外として、衣料品での原反不足や、官庁の管理下にある輸入原材料の制約などが挙げられる。
一方で、製造業はそれほど単純ではない。外注品を除けば、自社の製造能力を超えた商品を生産することはできない。そのため、自社の製造能力の範囲内で必要な収益を確保していく必要がある。
製造業における「時間当り収益性」の評価は、会社の製造能力や時間を効率的に使うために重要な概念です。以下は、時間当り収益性を把握し、収益性を改善するための要点です。
1. チャージレートの定義と種類
「チャージレート」は、製造業において単位時間当りの収益性を測定するための指標です。
具体的には、直接工(作業者)が生み出す単位時間当りの付加価値のことを指し、以下の種類があります:
2. チャージレートの計算方法
損益分岐賃率や必要賃率は、会社全体の固定費や目標利益を、直接工の総工数で割ることで計算します。計算式の分子は固定費に必要利益を加えた額で、分母は総工数を基に算出します。
3. 賃率による収益性の分類
商品ごとに単位時間当りの実際賃率を算出し、次の3つのグループに分類します:
- 出血商品(損益分岐賃率を下回る):収益が不足し、売れば売るほど赤字になる商品です。改善策としては、価格の見直しや生産能率の向上、または生産からの撤退を検討します。
- 貧血商品(損益分岐賃率を上回るが必要賃率を下回る):赤字にはならないが目標利益には達しない商品です。これも改善が必要です。
- 健康商品(必要賃率を上回る):目標収益を達成できる商品で、積極的に販売拡大すべきです。
4. 付加価値率と賃率の違い
付加価値率だけに基づいた収益性評価ではなく、賃率を見て判断することが重要です。
付加価値率が高くても、賃率が低い場合は収益性が低くなる可能性があります。特に、材料費が高い商品では付加価値率は低く見えますが、賃率が高い場合は収益性が高いことがあります。
5. 賃率と期間当りの付加価値の関係
収益性が高い商品でも、販売数量が少なければ会社への貢献度は限定的です。
反対に、賃率が低い「出血商品」が多量に販売されると、会社全体の収益性に悪影響を与えるため、期間当りの付加価値も考慮して、収益性を総合的に評価する必要があります。
まとめ
時間当りの収益性の評価と改善には、賃率を活用して製品ごとに収益性を分類し、戦略的に商品ポートフォリオを最適化することが有効です。
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