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利を追うにも、心と天命が伴ってこそ価値がある

孔子は「利(り)=利益」について、ほとんど語らなかった。
語るときですら、それは単なる損得ではなく、「天命に従った結果」あるいは「仁=相手にとっても善であること」として位置づけられていた。
つまり、自分だけが得をするような利には、孔子は価値を見出さなかったのだ。
利を追うにも、正しい道がある。その根底には、他者への思いやりと、自然の流れを受け入れる心がある。


原文(ふりがな付き)

「子(し)、罕(まれ)に利(り)を言(い)う。命(めい)と与(とも)にし、仁(じん)と与(とも)にす。」

孔子先生は、利についてはめったに語らなかった。
語るときでさえ、それは「天命に基づくもの」か「仁をともなうもの」かに限られていた。


注釈

  • 利(り)…個人の利益や損得。孔子はこれをむやみに追うことを良しとしなかった。
  • 命(めい)…天命。人知を超えた自然の摂理や人生の定め。
  • 仁(じん)…思いやりの心。自他の利益が調和する「人としての正しさ」。
  • 罕(まれ)に言う…ごく稀にしか言及しないこと。孔子の価値観の表れ。

原文:

子罕言利與命與仁。

書き下し文:

子(し)、罕(まれ)に利(り)を言(い)う。命(めい)と与(とも)にし、仁(じん)と与(とも)にす。


目次

現代語訳(逐語/一文ずつ訳):

  • 子罕言利:孔子は「利」について語ることがめったになかった。
  • 與命與仁:「利」ではなく、「天命」や「仁」について語ることを重視した。

用語解説:

  • 罕(まれ)に…言う:非常に少ない頻度でその話題に触れること。「避けている」というニュアンスを含む。
  • 利(り):目先の利益、金銭的・功利的な得失。儒家思想ではしばしば軽視される対象。
  • 命(めい):天命・運命。個人の力を超えた道理や天の定め。孔子にとっては倫理的判断の基盤でもある。
  • 仁(じん):儒教の中心概念。人間愛、誠実、思いやりを含む徳の核心。

全体の現代語訳(まとめ):

孔子は、利害得失の話をすることはほとんどなく、
それよりも「天命」や「仁(思いやり・誠実)」について語ることを重んじた。


解釈と現代的意義:

この章句は、孔子の価値観の優先順位を端的に示しています。
「利益」よりも「仁」=人としての徳性や、「命」=運命を受け入れる謙虚さを大切にする姿勢です。

現代社会では「成果」や「利益」が重視されがちですが、孔子は「誠実」「信念」「運命を受け入れた行動」の方が人間として価値あると考えていました。

これは、道徳と実利がぶつかる場面において、自らの内面に忠実であることを促す教えです。


ビジネスにおける解釈と適用:

1. 「利益第一」ではなく「信頼第一」の姿勢を重んじる

  • 「短期的利益」を追って組織の信頼や顧客の信頼を損なうような行動は避けるべき。
  • 孔子のように「仁」=顧客や同僚に対する誠実な対応を優先することで、長期的なブランド価値が育つ。

2. 不確実性を受け入れ、行動に誠実さを持つ

  • ビジネスは思い通りにいかないことも多い。そうした「天命」を受け入れつつ、誠意ある行動を貫くことが重要。
  • 「結果」より「姿勢と価値観」が問われる時代において、個人や組織の信頼形成の核心を突いている。

ビジネス用心得タイトル:

「利益より信念──“仁”を語る人が信頼を得る」


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