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2. 利益:事業存続のための必須条件

利益は企業が事業を継続し、社会的責任を果たすための「事業存続費」である。倒産は社会全体に大きな迷惑をかけるため、いかなる状況においても利益を確保することが社長の最優先課題となる。


目次

1. 利益の本質:「事業存続費」としての役割

企業経営において「利益」は単なる儲けではなく、次のような保険的役割を果たす。

  • 危機への備え:不況や競争激化、資源不足、天災などのリスクに対応するための余力を確保する。
  • 事業の再整備:利益があれば危機に直面しても立て直しが可能。時間を稼ぎながら再構築ができる。

これらを踏まえると、利益は事業の持続可能性を支える最低限の要素であり、「最小限の利益」を確保することが重要である。


2. 経営に必要な「最小限の利益」とは

最低限の基準:従業員一人当たり利益

「最小限の利益」を考える際、目安として以下のように計算することが有効です:

  • 一人当たり30万円の税引前利益を想定
  • 法人税(40%)と地方税(15%)を差し引く → 税引後利益:13.5万円
  • 配当金・役員賞与を控除 → 内部留保:10.5万円

この内部留保が事業継続と再投資のための資金となります。しかし、この水準では一年間の業績停滞に耐えることは困難です。


基準目標:一人当たり100万円の利益

企業が安定経営を維持するためには、一人当たり100万円の経常利益が必要です。この利益水準は、以下の理由から設定されます:

  • 業績停滞への耐性:一年間の停滞で赤字転落を防ぐ。
  • インフレへの対応:利益は毎年インフレ率を考慮し、引き上げ続ける必要がある。

3. 利益目標達成の段階的アプローチ

現在、一人当たり10万円~20万円程度の利益しか確保できていない企業が、いきなり100万円を目指すのは現実的ではありません。以下のように段階的に目標を設定し、実現を目指します:

  1. 短期目標:3年後に一人当たり40万円の利益を達成
  2. 中期目標:5年後に一人当たり100万円の利益を達成

このように、目標を段階的に引き上げながら計画的に取り組むことで、現実的な成果が期待できます。


4. 利益最大化の誤解

経済学では「利益の最大化」が企業行動の前提とされますが、現実の経営においては当てはまりません。なぜなら:

  • 最大限の利益は理論上のものであり、実際には「必要最低限の利益」すら確保できないことが多い。
  • 「最大限の利益を目指したが、会社は倒産した」では意味がない。企業が追求すべきは、確実に事業を継続するための「最小限の利益」です。

5. まとめ:利益は会社の生命線

利益とは「事業を存続させるための費用」であり、社会的責任を果たすために欠かせない要素です。

  • 最小限の利益を確実に確保し、安定経営を維持すること。
  • 一人当たり100万円の経常利益を長期目標とし、段階的に達成すること。

社長の使命は、会社を存続させ、社員の生活を守り続けることです。そのために利益を保険と捉え、慎重かつ計画的に利益目標を設定し、実現に向けて全力を注ぐことが求められます。

次に重要なのは「利益」を目標に据えることである。会社は、いかなる状況でも決して倒産させてはならない。

倒産は多くの人々に迷惑をかけるだけでなく、会社が担うべき「社会的責任」を果たせなくなるからだ。

その社会的責任とは、第一に「社会に富を貢献すること」、第二に「社員の生活を保証すること」を指す。この責任は極めて重大であり、これを自覚する限り、社長が安易な経営態度を取ることは決して許されない。

利益の捉え方:保険的費用・事業存続費である

「会社の存続」という至上命令を果たすためには、利益が絶対に必要だ。事業を継続することは容易ではなく、過当競争、不況、陳腐化、資源不足、天災地変といったさまざまな危機が次々と襲ってくるからである。

これらの危険に直面した際、もし利益がなければ、瞬く間に赤字に転落し、倒産の道を辿ることになる。利益があるからこそ、危機を乗り越え、時間を稼ぎながら事業の再整備を図ることができるのだ。

こうして考えると、会社にとって「儲け」という概念はもはや存在しない。利益とは、事業を破綻から守るための保険としての役割を果たすものだからである。

この意味で、利益の本質は「事業存続費」にほかならない。確かに経済学上の利潤や会計学上の利益という概念は存在する。

しかし、事業経営の観点から言えば、「利益」というものは独立した存在ではなく、事業を継続させるための必然的な要素に過ぎないのだ。

利益が事業存続費である以上、多ければ多いほど良いのは言うまでもない。しかし、現実的に考えると、まず問うべきは「最小限、ギリギリのところでどれだけの利益が必要か」という点である。

これは、火災保険と同じ考え方だ。万一火災に遭ったときの備えとして保険金は多いに越したことはないが、現実には「最小限、どれだけの保険が必要か」を考えるのと全く同じである。

社長が最優先すべきは、事業を存続させるための「最小限の利益」を確保することだ。

経済学が唱える「事業は利益を最大化するために行動する」という理論は、あくまで経済学上の話であり、経営学の実践には当てはまらない。

なぜなら、現実の経営において「最大限の利益」を追求する考え方を導入するのは、明らかに誤りだからである。

その理由は、企業があげられる最大限の利益は、実際には企業が必要とする最小限の利益を大きく下回ることが多い、という厳しい現実があるからだ。

「できるだけ利益をあげようと頑張ったが、これしか出なかった」では済まされない。それは、「できるだけ頑張ったが、会社はつぶれてしまった」では到底許されないのと同じ理屈だ。このことをしっかり心得ておくべきである。

最小限利益

では、その最小限利益とは具体的にどれくらいなのだろうか。これは理論ではなく、現実の問題として考えるべきだ。一つの指標として、「従業員一人当たりの税引前利益」を基準に考えると分かりやすい。(税引前利益は経常利益とほとんど差がないため、経常利益で考えても問題はない。)

例えば、一人当たり30万円の税引前利益を想定してみよう。(詳細は第1表を参照。)この金額から法人税約40%と地方税15%を支払うと、合計16万5千円が税金として差し引かれる。残る税引後利益は13万5千円となる。

さらに、この13万5千円から配当金2万円と役員賞与1万円、計3万円を支出すると、最終的に内部留保として残るのは10万5千円になる。この内部留保が事業の再投資や予備費として機能するが、もしこの利益が不足すれば、事業の継続性に大きなリスクが生じることになる。

付加価値の源泉(流通業者の場合は粗利益)が翌年も同水準にとどまった場合、特に人件費の上昇が見込まれると、たちまちその増加分を賄えなくなり、赤字に転落する危険性がある。このような状況は常に起こり得るため、慎重な利益計画が必要だ。

たった一年の業績停滞で赤字に転落するようでは、安定経営は望めない。少なくとも一年程度の業績停滞に耐えられるだけの利益を確保する必要がある。その基準として、第1表の計算式によれば、一人当たり100万円の利益が目安となる。この100万円でさえ、インフレの影響を受け、年を追うごとに高い水準へ修正し続ける必要があるのだ。

一人当たり100万円の経常利益が必要だとしても、現在一人当たり10万円や20万円しか利益を上げていない場合、いきなり100万円を目指すのは現実的ではない。段階的な目標設定と計画的な取り組みが求められる。

そのため、三年から五年後に一人当たり100万円の経常利益を達成することを目標とし、まず中間目標として40万円を設定するのが現実的だ。このように段階的に目標を引き上げていくアプローチが、実践的かつ効果的である。

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