企業が限られた資源を有効に活用し、生産性を高めることは、持続的な成長と競争力の維持に不可欠です。しかし、管理機構や効率化の手法を盲信してしまうと、本来の生産性が低下してしまうことも多々あります。以下、生産性を向上させるために重要な視点と手法について解説します。
1. 生産性とは
生産性は「成果に対する費用の割合」を表します。会社における生産性は、一般的に次の式で表せます:
[ \text{生産性} = \frac{\text{産出高(成果)}}{\text{投入高(費用)}} ]
産出高は会社が生み出した「経済的価値」、つまり付加価値、限界利益、加工高などです。投入高には、人件費や経費、設備投資、運転資金などが含まれます。
2. 生産性の傾向を把握する
企業の生産性は単年の数値ではなく、少なくとも3年分のデータを比較して傾向を把握する必要があります。絶対値が高くても下降傾向にある場合は、長期的に問題を抱えている可能性が高いため、方針の見直しが求められます。
会社全体の生産性の計算式は以下の通りです:
[ \text{会社全体の生産性} = \frac{\text{総付加価値(粗利益)}}{\text{総費用}} ]
この指標が上昇傾向にある場合、現行の方針が正しいと判断できますが、下降傾向ならば方針転換が必要です。
3. 部門別生産性の測定
正確な生産性の評価には、部門別に生産性を測定することが効果的です。分子に部門の付加価値(粗利益)、分母に部門の人件費を使い、次のような指標を算出します:
[ \text{部門生産性} = \frac{\text{部門の付加価値}}{\text{部門の人件費}} ]
この値が「3」を上回っている場合、事業として価値があると判断できます。生産性の指標は比率であるため、インフレーションなどの物価変動の影響を受けにくく、安定した評価が可能です。
4. 代表的な生産性指標
各活動ごとに生産性を測定するために、さまざまな指標が使用されます。たとえば、労働生産性や資本生産性などです。計りたい指標を分母に設定するだけで、簡単にその生産性を算出できます。
- 労働生産性:成果を人件費で割る。
- 資本生産性:成果を設備費用で割る。
これらの指標を使って、企業内のどの部分が効率的か、どの部分が非効率かを可視化します。
5. 販売に関する生産性の注意点
販売活動に関する生産性は、単純に高ければ良いというわけではありません。たとえば、セールスマン1人あたりの付加価値が高すぎると、顧客訪問の頻度が減り、顧客サービスの質が低下します。結果として、競合にシェアを奪われてしまうリスクが生まれます。
在庫効率も同様に、高すぎると品切れが増え、顧客満足度が低下する可能性があります。こうした場合、販売生産性は「高すぎず、低すぎず」が理想であり、状況に応じた適切なバランスが求められます。
6. 生産性向上の基本原則
生産性向上のためには、次の2つのアプローチが取れます:
- 分母を小さくする:投入高を削減することで生産性を上げる。
- 分子を大きくする:成果を増やすことで生産性を上げる。
多くのマネジメント理論は、コスト削減(分母を小さくすること)を重視しますが、分母を縮小するだけでは、限界があるうえに成果の向上にはつながりません。むしろ、成果を拡大することが、本質的な生産性向上のカギです。
7. 成果を最大化するための事業構造の最適化
最も重要な生産性向上の要素は「事業構造」です。事業構造の最適化こそが、企業の成果に直結するため、業界や市場、顧客、商品、供給体制、人的構成、財務状況を全体的に見直すことが必要です。特に「商品分析」を行うことで、提供している商品の強みと弱みを把握し、戦略的な商品管理が可能になります。
結論
生産性の評価には、単なるコスト削減や管理手法の導入ではなく、成果を最大化する視点が不可欠です。生産性向上を目的とする場合、年計や生産性指標を活用し、企業の持つ資源が効果的に使われているかどうかを定期的に確認することが大切です。
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