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商品価格と規模に合わせる

企業が成功を収めるためには、商品価格と規模の適合が重要である。適切な価格帯を設定し、事業体制や市場戦略をその基準に基づいて調整することで、効率よく収益を上げることができる。

この記事では、土木工事業者G社や粉霧乾燥機メーカーA社、中型除雪機のT社が、それぞれの価格設定や事業戦略に基づき、いかにして業績を安定させたかの事例を紹介する。

これらの事例からは、適切な価格帯の見極めや外部市場への進出が、企業の成長と安定にどのように貢献するかが明らかである。

目次

商品価格と規模に合わせる

G社は土木工事業者で、社員総勢20名ほどの小規模な会社だった。私が訪問したとき、業績は赤字であり、それはもはや会社の体質とも言える状態だった。競争が激しく、採算の取れない工事が多いというのがその理由だった。

私は、物件価格別の粗利益リストを作成してもらった。このリストを見ると、G社がどのようにすべきかが明確に示されていた。しかし、G社長はそのリストの示す方向とはまったく逆の考えを持っていたのだった。

リストは、3,000万円以上、2,000万円以上、1,000万円以上、1,000万円以下の物件に分けて作成してもらった。その結果、3,000万円以上の物件の粗利益率は10%にも満たず、価格が低くなるほど粗利益率が高いことがわかった。特に、1,000万円以下の物件では、粗利益率が30%から50%にも達していた。

どの業者も高額物件を狙っており、競争が激しいのはこの高額物件の分野だった。一方、1,000万円以下の物件については、どの業者も手を出したがらず、避ける傾向にあったのである。

社長はこうした実態をまったく知らず、他社と同じように高額物件ばかりを追いかけていたのだった。しかし、リストを見てからは1,000万円以下の低額物件に重点を置くよう方針転換を行った。その結果、驚くほど速やかにG社は黒字転換を果たしたのである。

A社はスプレードライヤー(粉霧乾燥機)の専門メーカーだった。あるときA社長はこう言った。「一倉さんの占有率理論は我が社には当てはまらないんですよ。我が社の占有率は90%にも達しているのに、赤字経営なんです」と。

この謎は年間の売上グラフを見ることで解けた。グラフは大きな不規則な鋸刃状を示していたが、これは会社の実力や規模に対して商品価格や物件が高すぎる場合に発生する典型的なパターンだった。

製造や工事が大規模であるため、会社の資源(人材、物資、資金、時間)の大部分をそれに投入せざるを得なくなり、その結果、他の商品を製造することが難しくなってしまう。そのため、他の顧客に迷惑をかけて信用を失うだけでなく、売上も立たなくなり、大型商品の売上だけが突出してしまうために、年間売上が鋸刃状のグラフになるのである。

仕掛期間が長くなり、その間売上代金は入らず、逆に仕掛在庫が膨らんで資金繰りを圧迫する。これが赤字の原因であり、まさに「百害あって一利なし」の状態なのである。

製品価格がどれくらいか尋ねると、2億〜5億円程度で、1億円以下の商品はなるべく避けているという。なぜそんな高額商品を扱うのか問いただすと、「図面を書く手間が、○を一つ増やすだけで十倍の金額の商品になるから」という答えだった。わずかな製図費を節約するために、結果としてその何万倍ものロスを発生させ、赤字を招いていることに気づいていなかったのだ。

その点をよく説明した上で、適切な製品価格の算定基準についても説明した。「あなたの会社には100名の社員がいる。適切な商品価格は、社員一人あたり1万円と考えて100万円とする。これを下限とし、上限はこれにゼロを一つ加えた1,000万円だ。この価格範囲で仕事を行い、この基準が適切かどうか確認してみなさい。そうすれば、あなたの会社の業績は安定するでしょう」と伝えた。

偶然にも、A社の工場内に空いていた建物を借りていた会社が廃業することになり、その事業を引き継がないかという話が持ちかけられた。その商品の一つである「塗料用のロール機」の価格を聞いてみると、中型で500万円だという。価格的にちょうど適しており、これを新商品候補として検討することにした。

もちろんこれだけでなく、いくつかの新商品候補を探すことにした。T社は中型の除雪機を製造しているメーカーであり、年間売上は中規模の鋸刃状を示していた。T社は大手メーカーに囲まれた小企業であり、限界生産者であるために売上不足が起こっているのであり、必ずしも商品価格帯が高すぎるわけではなかった。

これより低価格の商品となると家庭用市場になってしまい、多量生産が必要となるからである。その市場では大手の先発メーカーが大きな占有率を握っており、T社が参入するのは不可能だった。

しかし、大型進出を図るには力不足が否めない。そこで、どうすべきかという問題に直面するが、唯一の道は輸出に活路を見出すことだ。これは、大手に押されがちな中小企業にとっての生き残り戦略の一つであり、成功例も多く存在する。例えば、赤井電機はアメリカ市場での成功を収めた歴史があるし、IBMに押されたアップル社も、輸出で道を切り開いた。これは国を問わない普遍的な戦略である。

私は社長に欧米市場の視察を勧めた。その結果、ヨーロッパ市場への進出の可能性が見えてきた。そして、この挑戦は見事に成功を収めたのである。

まとめ

事業の健全な成長には、商品価格と企業規模を適切に整えることが重要である。G社は小規模な低額物件に注力することで黒字化に成功し、A社は事業の基準価格帯を見直すことで資金繰りの改善を図った。

また、T社は国内市場の競争が激化する中で輸出に目を向け、ヨーロッパ市場への進出に成功した。

これらの例から、企業は自社に適した価格帯を基準に事業戦略を練り、柔軟な市場対応と価格設定を行うことで、安定した成長と収益を実現できる。

これらの事例は、事業の規模や競争環境に応じて商品価格や受注の規模を最適化する重要性を示しています。

  1. G社のケース:小規模案件への注力
  • G社は土木工事の中で、競争の激しい高額物件ではなく、比較的低価格の物件にフォーカスしたことで、競争から抜け出し高い利益率を確保し、黒字転換を果たしました。小規模案件を集中的に受注することで、安定した収益と競争優位を築きました。
  1. A社のケース:適切な価格帯の再設定
  • A社は高額の粉霧乾燥機に注力していましたが、製品の大型化が資金繰りを圧迫して赤字が続いていました。従業員数に合わせて一件の製品価格を一千万円程度に抑える戦略に転換し、さらに新たな価格帯に合う商品(塗料用のロールミル)も検討することで、経営の安定化を目指しました。
  1. T社のケース:輸出で新たな市場を開拓
  • 国内での競争が激しい中、T社は大手と競合するのではなく、輸出市場に目を向けました。社長がヨーロッパ市場に出向き、販売先を確保することで、国内に縛られない成長の可能性を見出しました。

学び

  • 適切な価格帯の選択:自社の規模や競争力に合わせて、利益率が高く、競争が少ない価格帯に集中することが、持続的な成長と安定をもたらす。
  • 新市場や製品の検討:自社に最適な価格帯に沿った新しい商品を導入したり、地域の市場環境に応じた製品展開で事業の多角化を図る。
  • 輸出という選択肢:国内での競争が激化している場合、輸出市場を開拓することで、国内の制約を超えた成長が可能となる。

このような「商品価格と規模に合わせる」戦略により、企業は安定した収益構造を築き、外部環境の変化にも柔軟に対応できるようになります。

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