商品名・型式名が販売を左右する
商品名や型式名は、単なる名称ではなく、商品のイメージや販売促進に直結する重要な要素だ。適切なネーミングは、商品の魅力を効果的に伝え、消費者の購買意欲を高める力を持つ。一方で、凝りすぎた名前や覚えにくい型式名は、商品の価値を十分に伝えられないどころか、販売の妨げになることさえある。
親しみやすさがもたらす成功例
東芝が開発した「自動炊飯器」を「電気釜」と呼び替えた松下の例は、その好例だ。「電気釜」という名前は、消費者に親しみやすく直感的に商品をイメージさせる。さらに、松下が「電卓」を「電子ソロバン」と名付けたのも、消費者にとって馴染みのある名前で安心感を与える巧妙な戦略だ。たとえ「電子ソロバン」が古臭いと批判されたとしても、その名前が商売上成功を収めたことは紛れもない事実である。
親しみやすい名前が購買意欲を高めるという発想は、顧客目線を重視したネーミングの重要性を物語っている。
ネーミングの失敗例:狙いすぎた商品名
一方で、過度に奇抜な名前や分かりにくいネーミングは逆効果を生む。三菱の「デボネア」や山陽国策パルプの「ポコ」など、奇をてらった名前は、消費者に響かず、商品の印象を弱めてしまうことがある。これに対し、「組立棚」のように直感的で用途が明確な名前の方が、消費者に親しみやすく、購買意欲を高めやすい。名前が凝りすぎると、かえって消費者との距離を広げてしまう可能性がある。
型式名も顧客目線で
商品名だけでなく、型式名にも注意が必要だ。多くの企業では、型式名に商品の頭文字や特性、寸法などを詰め込みがちだが、これが顧客や流通業者にとって混乱の原因となる。例えば、LHMB、LMHB、LMNAといった複雑で似通った型式名が並ぶと、顧客や業者は区別がつきにくく、結果的に商品への興味や購入意欲を損ねてしまう。
型式名はシンプルかつ覚えやすいことが最優先であり、ローマ字と数字を組み合わせて4文字程度に抑えるのが理想だ。たとえば「A123」や「AB45」といった短く簡潔な型式名なら、流通業者や顧客にとっても直感的に理解しやすい。製品の詳細な仕様は説明書やカタログで伝えるべきであり、型式名に詰め込む必要はない。
フォントデザインの落とし穴
さらに、商品名の字体デザインにも注意が必要だ。奇抜で装飾的なフォントを選ぶと、かえって読みにくくなり、商品そのものの魅力を損なうことがある。字体はあくまでシンプルで明快にし、読みやすさを重視すべきだ。顧客にとって分かりやすく、親しみやすい商品名と字体が、販売促進において重要な役割を果たす。
まとめ:顧客視点でシンプルかつ直感的な命名を
商品名や型式名は、顧客との最初の接点であり、商品イメージを形成する重要な要素だ。ネーミングやデザインにおいては、「分かりやすさ」「親しみやすさ」「覚えやすさ」を基準に、消費者目線での配慮が欠かせない。
奇抜さや複雑さを追求するのではなく、シンプルで直感的な名前を選ぶことで、商品の魅力を最大限に引き出し、販売促進の効果を高めることが可能になる。企業が優れた商品を作るだけでなく、その価値を正しく伝えるためには、商品名や型式名に対する慎重かつ柔軟な姿勢が求められる。
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